シーザリオ
Cesario
牝、2002年3月31日生まれ
父スペシャルウィーク
母キロフプリミエール(父Sadler’s Wells)
馬主/キャロットファーム
調教師/角居勝彦
生産牧場/ノーザンファーム
通算成績/6戦5勝
シーザリオは米国のGⅠレースで優勝した初めての日本調教馬だ。
歴史的快挙が達成されたのは2005年7月3日のことだった。レースは米カリフォルニア州ハリウッドパーク競馬場の芝2000㍍で行われたアメリカンオークス。3歳牝馬限定のGⅠレースだった。地元米国勢をはじめ欧州からの遠征馬も加わり、出走馬は12頭になった。福永祐一騎手とともに好スタートを切ったシーザリオは3番手を確保。3コーナーで早くも先頭に立つと、そのままゴールまで先頭を譲らなかった。2着馬とは4馬身もの差があった。勝ちタイムの1分59秒03は従来の記録を破るレース新記録で、2着との4馬身差も4回目のアメリカンオークスで最大記録となった。
1959年2月、サンタアニタ競馬場でハクチカラがワシントンバースデーHを制して以来、数多くの日本調教馬が米国の重賞レースに挑んだが、厚い壁を突き破ることはできなかった。46年後、ついにシーザリオが風穴をあけた。それもGⅠ制覇という快挙だった。
結局、アメリカンオークスは、シーザリオの現役最後のレースになった。脚の故障が治らず、2006年4月に現役登録を抹消した。わずか6戦、7カ月足らずの短い現役生活だったが、これ以上ない足跡を競馬界に残した。
シーザリオの父は日本ダービー馬のスペシャルウィーク。母のキロフプリミエールは英国生まれで現役時代に米国のGⅢラトガーズH(芝2200㍍)を制するなど13戦5勝の成績を残した。シーザリオは栗東の角居勝彦厩舎に預けられ、2004年12月に阪神競馬場でデビュー勝ちを収めた。2歳時はこの1戦だけ。3歳になると寒竹賞、GⅢフラワーCにも勝って、デビューから3連勝で桜花賞に臨んだ。
デビューから3戦すべてで手綱を取った福永騎手にはラインクラフトに騎乗する先約があった。このため桜花賞では地方競馬所属の吉田稔騎手がシーザリオの手綱を取ることになった。レースは終始、好位置をキープしたラインクラフトが優勝。シーザリオはよく追い込んだが、アタマ差の2着だった。
続くオークスではラインクラフトがNHKマイルCに回ったため、再び福永騎手とのコンビが復活した。しかしスタートで後手を踏み、後方からの苦しいレースになった。なんとか馬群をさばいて追い込み、エアメサイアをクビ差で捉えて優勝した。
日本と米国でGⅠを制したシーザリオの本当の価値が判明するのは、母になってからだった。シンボリクリスエスとの間に菊花賞馬エピファネイアを産み、キングカメハメハとの交配でリオンディーズを出産、ロードカナロアとの間に皐月賞馬サートゥルナーリアを送り出した。この3頭がすべて種牡馬になったというだけでもすごい話だが、エピファネイアはダービー馬ダノンデサイルのほか牝馬三冠のデアリングタクト、皐月賞馬エフフォーリアなど、これまでの7頭のGⅠ優勝馬の父となった。リオンディーズも息子のテーオーロイヤルが2024年春の天皇賞を制した。サートゥルナーリアも2024年に初年度産駒が2歳になって走り出し、順調な滑り出しを見せている。
シーザリオは2021年2月27日にこの世を去ったが、その血は息子たちを通じて、これからも広がっていく。