やや遅めの振り返りとなってしまうが、昨年末の中山大障害は面白かった。最高に楽しめた。
序盤で行きたがった前年の優勝馬マイネルグロン。伏兵だが主導権を取りに行ったテイエムタツマキ。そして体力的に最もきついはずの終盤の坂の上りで仕掛けてVを奪還したニシノデイジー。最初から最後まで見どころにあふれていた。
そして、それら障害ホースの激闘を見事に演出したのが、さまざまな中継技術だった。
まずはドローン映像の導入だ。筆者が毎週、レースをチェックするのはグリーンチャンネルなのだが、少なくとも同チャンネルでの競馬中継の映像でドローンを使ったものは見たことがない。NHKや民放が過去のレース中に使っていたのであれば不勉強を恥じるしかないが…恐らく初めてではないだろうか。(ちなみに、ばんえい競馬では模擬レースで使ってみたようだ)

そして、その映像。新鮮だ。そして鮮明だ。ドローンが映し出したのは急坂の上り下りのところでカメラや観客席から死角となっていた場所。そこを鮮やかに映し出した。「めちゃくちゃいい映像」「マジでよかった」という反応がSNSで上がっており、ファンにはおおむね好評のようだった。
これを実現することが簡単でないことは承知している。走行中の馬にドローンがどんな影響を及ぼすか、JRAは恐らく実験を繰り返したことだろう。さらに、出走する騎手からの了解も取ったと思われる。今回は障害騎手だけだったから、スムーズに運んだのかもしれない。騎手の協力なくして、この画期的な映像は実現しなかった。
そして、当欄で以前にも紹介したトラッキングシステムも力を発揮した。個人的に“刺さった”のは「勾配」の表示だ。中山の急坂で「2%」と出る、アレである。
中山の障害コースにしかない深い谷の上り下り。表示した勾配の数値は驚きの「13%」だった。
13%の上りがどれだけ凄いか。箱根駅伝の5区、いわゆる「山登り」は、だいたい約6%の勾配だという。もちろん、長時間上り続ける箱根の坂と競馬場のコースを単純比較はできないが、13%の凄みは伝わってくる。
もうだいぶ前になるが、大江原圭騎手の父であり、名障害騎手だった大江原隆さんが現役だった頃。あの急坂について聞いたことがある。「あれは坂じゃない。壁だよ壁!」と即答してくれた。そんな“壁”で勝負を仕掛けたニシノデイジーは改めて、歴史に残る名ジャンパーだったのだと思える。
もちろん、定番であるコース図(今、走っている場所もすぐに認識できる)も分かりやすく、以前より見やすくなった印象。障害を迎える直前に表示される障害の名称、グラフィック、高さ&幅の表示、なども気が利いている。こちらも見やすくなったように思う。
毎度好評の「ジョッキーカメラ」で、JRAは映像技術の向上が競馬の魅力をよりアップさせることに改めて気付いたのではないか。平地競走でもドローンの導入はあるのか。まあ、それはさておき…、これからも新たな映像技術の開発に取り組んでほしい。