今年は梅田調教師の配慮で、僕の最後の北海道出張は函館の開幕週から札幌の最終週までのフル滞在となった。
だがこれといって「最後だから何かをしよう!」というものもなく、毎年と同じようなルーティンで過ごしていて、時だけが無情に過ぎていった。
札幌競馬も終盤を迎えた8月下旬。今年はほとんど裏函館での滞在調教だったので、たったラスト2週間の札幌滞在となった。
そこで考えたのが札幌で競馬関係者として最後に何か記念になる事ができないか?だった。
昔は年末の阪神で開催されていたが、近年は札幌開催の終盤に行われているワールドオールスタージョッキーズ(WASJ)。
この数年はWASJが行われている時期に札幌に滞在していたので、海外の騎手を中心にサインをもらい友人にプレゼントしたりしていた。
そこで思いついたのが、今年のWASJの帽子(一般販売)にできるだけ沢山の騎手に寄せ書きサインをしてもらうというもの。
これは関係者じゃなければ無理だし、僕のような色々なオタク活動で出待ちなどをやってきた人にしか出来ない仕事だ。
ターゲットの騎手のレース間の時間や、直前成績はどうだったか?などは入念に調べて、サインを貰える状況や、本人の機嫌の良し悪しの雰囲気を察知して貰いに行くタイミングを図っていた。
土日の2日間、僕の担当馬のレースや厩舎のお手伝いなどがあったが、検量室からパドック付近を徘徊し、挙動不審者に見られないよう注意しながらチャンスをうかがった。
武豊騎手にはちょうど彼が勝った後、少しレース間があったタイミングで声をかけた。「もう来年で定年で、今年札幌最後なんやわ。記念に帽子にサインお願いします。ツバの真ん中に!」と言うと「えっ!田中さんもう定年なんですか…早いですねー。」と笑顔でサインしてくれた。「辞める前にまた乗ってね。」と言うと「喜んで!」と返してくれた。
やはり彼はいつでもどこでもナイスガイだ!
武豊騎手が真ん中にサインしてくれたおかげで、その後の外国人騎手は皆笑顔で寄せ書きをしてくれた。
WASJは今年も大盛況で幕を閉じた。パドックの内側から観る表彰式はこれが最後なんだろうな…と、しばらく感慨に浸っていたが、プレゼンターの阿部詩ちゃんが帰る時に数人の関係者が追いかけたので僕も急いで便乗。ちゃっかり一緒に写真撮ってもらった。ここでもオタクの本領が発揮された。
これが2日がかりでサインをもらった帽子だが、同じ物を2つ用意して書いてもらった。
上左から、ルメール騎手、レーン騎手、サンチアゴ騎手、坂井瑠星騎手、ツバ部分が左からモレイラ騎手、武豊騎手、ティータン騎手。
この帽子2つは最初から誰かにプレゼントしようと思っていたが、札幌でお世話になった友人とファンの人、2人に贈呈した。僕は工程を楽しんだだけで充分満足なのだ。
最後の札幌でのオタク活動……あー、楽しかった!