UMATO

2025年08月17日 (日)
中京記念 / 札幌記念

 6月3日(火)から有休消化期間に入り、しばらく嫁さんと北海道の北東部などを車で旅していた。

 そして、7月9日(水)に正式に厩務員を定年退職し、失業保険の申請やら引っ越しやら忙しくしていたが、7月13日(日)から再び北海道へと渡ることになった。

 矢作芳人調教師が2023年に北海道虻田郡真狩村に開業した「コテージエクリプス」と「真狩サマーステーブル(2024年夏より稼働)」。

 そのサマーステーブルの今季のお手伝いを頼まれたのだ。

 伊藤雄二厩舎時代の夏に日高の牧場で牧草のお手伝いしたりしたが、正式に生産牧場や育成牧場で働いたことのない牧場素人だ。

 しかも身体がなまりきったポンコツじじいなので、自分の中ではあくまで「研修」という形でのお手伝いだ。

山脈に属していない独立峰として、日本では富士山に次ぐ規模の羊蹄山。その麓にある、コテージとサマーステーブル。
3棟ある「コテージエクリプス」。冬はスキー客などで賑わうが、夏季の北海道の競馬期間は営業していない。
真狩サマーステーブル。矢作厩舎の馬を中心に(他厩舎の馬も受け入れ可能)、夏季の函館競馬と札幌競馬の開催中だけ開場する牧場。

 2年前、札幌競馬場出張時にここの完成セレモニーの日にゲストとして来て、コテージに1泊させてもらったので、大体どんな感じかは分かっていた。

 今回は夏場は営業していないこの立派なコテージに24連泊して、牧場の仕事をお手伝いする。

 ちょうど僕が真狩村に着いた時は、函館競馬から札幌競馬への移行時期のタイミングで、7〜8頭の馬がいた。

 北海道といえども近年はとても暑い。もともと避暑地と言われたこの真狩村やニセコ地区も例外ではなく、連日30度超えの真夏日だった。「北海道行けば涼める」という時代はもう終わったのかもしれない。

 僕の仕事は、まずウォーキングマシーンに馬を入れて、その間に馬房の掃除。

 その後マシーンでウォーミングアップが終わった馬を順番にトレッドミルに入れてダクやキャンターなどの調教を消化する。トレッドミルではもしもの時のサブとして見ているだけ。

ウォーキングマシーンに馬を入れてから、空いた馬房の掃除。
育成牧場はほとんど常設しており、栗東トレセンでも主流になりつつあるウォーキングマシーン。ここのは4頭まで収容可能。
馬によって歩かす時間が違う。レースに向かう馬のほとんどがこの後トレッドミルに移行する。
トレッドミルでは、時速10kmくらいのダク(軽速歩)から、約30kmまでのキャンターが行われる。もちろん馬によってメニューが違う。

 僕はあくまで部外者のお手伝いなので、運動メニューや飼葉など重要な部分には一切関わらず、もっぱら掃除と馬洗いなどに専念。

 その日のメニューが終わった馬から順次洗い場に入れて、全身を洗ったり手入れをしたりする。

 これは40年以上やってきたのでお手のものだが、身体がなまっていた所に真夏の1日7〜8頭(午前と午後の2回)の馬洗いや手入れはやはりキツかった。

サマーステーブルの洗い場。大人しくて優しい馬ばかりでありがたかった。

 まあ北海道の牧場あるあるだが、夏場は虻や蝿(血を吸うやつ)が多くて困る。

 運動中や洗い場で馬や人にまとわりついてくるので、虫よけや撃退のスプレーは必需品だ。毎日虫たちとの戦いに明け暮れたと言っても過言ではない。

 まあでも、忙しくしていたのは最初の10日くらいで、その後馬はどんどん札幌競馬場へと出発し、馬が減り仕事は急に楽になった。

 そんな時、暇な時間を解消してくれたのが、この牧場のアイドルホース、ポニーの「ホーネット」君。わての呼び名は「ホーちゃん」。

真狩サマーステーブルのアイドルホース、ポニーの「ホーネット」君。
人が近づくと、散歩に連れて行けとばかりに寄ってくるホーちゃん。

 ほとんどの馬の滞在期間は1週間から10日程度で、長くても2週間くらいの付き合いだが、このホーちゃんとは最初からずっとお付き合いしているので、帰る時は別れが悲しいだろう…

 次回はそんなホーちゃん散歩や、真狩村の景色を含む牧場の他のお仕事をご紹介させてもらおうと思う。

 つづく

田中一征 (Kazuyuki Tanaka)

1960年大阪府泉大津市生まれ
JRA栗東トレーニングセンター梅田智之厩舎厩務員
元伊藤雄二厩舎でワコーチカコ、エアグルーヴ、ファインモーションなどを担当。今年で43年目となり7月に定年退職予定。

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