UMATO

2025年08月27日 (水)

 真狩村は、札幌から車で国道230号線を南西方向に向かって1時間30〜40分程度で着く。
 もう10分ほど走ればインバウンドで有名なニセコエリアだ。

 サマーステーブルは、真狩村の中心地から車で5分くらいの所にある。
 サマーステーブルを見下ろす感じでそびえている羊蹄山は、日本百名山のひとつで、独立峰(山脈などに属さない)としては富士山に次ぐ2番目に大きな山だ。
 登山愛好家なら必ず登る山で、山頂までのルートはいくつかあるが、サマーステーブルの前の道を少し上がった所にある、真狩登山口が一番人気らしい。

真狩村のメインストリート。ここからの羊蹄山の景色は素晴らしい。
羊蹄山の真狩登山口へ行く途中にある、真狩サマーステーブル。
ニセコ側から見た羊蹄山。ここからの景色が一番「蝦夷富士」にふさわしい。

 真狩村は羊蹄山の南西部に広がり、海がなく見渡す限り畑ばかりだ。
 住民の仕事はほとんどが農業や畜産で、少しだけ観光といった感じだろう。
 僕は1ヶ月弱滞在していたので、帰る頃には農作物の畑を見ただけで、これが何か分かるようになっていた。

 馬の話からは外れるが、少しだけ真狩村の野菜たちを紹介しよう。

大豆と見分けがつきにくい作物のひとつ、小豆。少し葉が小さ目で色も違う。
こちらが大豆。真狩村の特産のひとつでもある。
北海道は人参も有名だが、真狩村でも多い。
そして北海道と言えばやはり、じゃがいも。さすがに葉っぱだけでは品種は分からなかった。
これがビックリした、アスパラ。もう収穫が終わり、放置して葉っぱが伸び放題。これは来季の為に球根に栄養をためる作業だそうだ。
真狩村特産のひとつ、ユリ根の栽培。もちろんここからユリの花が咲く。
羊蹄山をバックにユリの花が咲きかけた公園。これは観光の観賞用。
これは真狩村ではなく隣町ニセコからの景色だが、もちろん北海道ならではのトウモロコシもたくさん栽培されている。

 写真で紹介した野菜はほんの一部だが、こういう野菜の種類を覚えてしまったのは、毎日車で農道を通って行く仕事があったからだ。

 まず、馬糞をトラックに乗せて農家さんの空き地に捨てに行く仕事。
 捨てると言っても、しばらく置いて発酵させて有機栽培などの肥料として再利用される。
 農家さんとこちら側がウィンウィンの関係という事なのだ。

農家さんの空き地に馬糞を捨てているところ。これをしばらく発酵させて、土のような状態にしてから畑に肥料として撒く。

 そして、もう一つの仕事は、酪農をされている佐々木牧場さんへ、馬の敷料である「麦稈(ばっかん)」や、馬の飼料である「乾草」をもらい(買い)に行く仕事。
 佐々木牧場さんには猫が数匹居て、戯れるのが一番の楽しみだった。(牧場猫の話は来週掲載予定)

酪農の佐々木牧場さん。馬の敷料である麦稈をトラックに積んでもらう。でかいが、麦藁なので思ったよりは軽い。
同じくトラックに、馬の飼料の乾草を積んでもらっている所。これは密度が濃いのでめちゃめちゃ重い。
この佐々木牧場さんに居着いているマスコット猫。桜猫(去勢済の地域猫)だが、名前はないらしいので、勝手に「白茶」と名付けた。

 こういう作業をしていると、JRAの厩務員がどれだけ恵まれているか分かる。
 厩務員の皆は、裏方さんの苦労を思いながら、感謝して仕事してほしいものだ。

 真狩サマーステーブルで24日間お手伝いさせてもらったが、僕の仕事は馬房掃除と馬の手入れ(洗い)がほとんどで、終わったらポニーのホーネット君(ホーちゃん)との散歩が日課。
 雨の日は競走馬用のトレッドミルで歩かせたりもした。

競走馬の洗い場に大人しく入るホーちゃん。
羊蹄山を見ながら牧場敷地内を散歩するホーちゃん。
たまに、牧場外の敷地に冒険に出かけるホーちゃん。
雨の日は運動不足になるので、競走馬用のトレッドミルで汗を流すホーちゃん。

 競走馬はすぐ入れ替わり、思い入れのできた馬は少なかったが、ホーちゃんは毎日遊んだので、帰る時はちと感傷的になってしまった。

僕の最後の仕事が終わり、ホーちゃんと最後の散歩。コテージの窓ガラスで記念写真。

 ニセコ地区は、冬のスキーシーズンほどではないが外国人だらけで物価も高め。

 景色は素晴らしいが、そんなに心地良い場所ではなかった。

 けど、そのすぐ隣の真狩村はとてものどかで静かな田舎町で、どこを切り取っても素晴らしい景色だった。

 この1ヶ月弱の滞在で、42年間働いた身体が心から癒された気がする。

サマーステーブルのすぐ隣にある、コンビニでも売っている羊蹄山の湧き水。無料なので毎日たくさんの人達が汲みに来る。僕も毎日飲んでいた。
雄大な独立峰、羊蹄山。その麓にある美しい真狩村の景色。

 旅行で北海道に来て、札幌近郊をレンタカーで走る事があれば、皆さんもこの風光明媚な真狩村に是非足を延ばしてみてはいかがだろうか…?

田中一征 (Kazuyuki Tanaka)

1960年大阪府泉大津市生まれ
JRA栗東トレーニングセンター梅田智之厩舎厩務員
元伊藤雄二厩舎でワコーチカコ、エアグルーヴ、ファインモーションなどを担当。今年で43年目となり7月に定年退職予定。

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