7月9日の定年退職の日、今までお世話になった皆さんにご挨拶の意味合いもあって、厩務員として最後のトレセン場内に入った事を以前書いた(栗東トレセン探訪⑦参照)。
その時に構内を回ったついでに、坂路コースへと続く逍遥馬道の中に入った。
UMATOに載せる為のネタ作りの意味合いもあったが、この逍遥馬道は僕の厩務員人生のスタート頃に出来て、今まで幾度も歩いてきた場所。
端から端まで歩くのは、いつぶりか忘れたくらい昔の事なので、最後にその景色を見てみようと思ったのだ。
この逍遥馬道ができたのは坂路コースができた1985年の数年前だと記憶している。
それが坂路コースを作るための段階的なものだったのか、ただゆるやかな坂道を歩かせるという調教の一貫だったのか、僕の知識では分からない。
僕が栗東トレセンに入った1983年から数年、午後から厩舎の数人でこの逍遥馬道を乗り運動するのが日課となっていた時期がしばらくあった。
ただ同僚の誰かが馬から落ちて、放馬して捕まらず大変だった事から、厩舎周りの運動場に戻ったという経緯がある。
その時代の事を思い出しながら、めちゃくちゃ久しぶりに逍遥馬道の全路を歩いた。
かつてここを馬に跨って運動した時は西側の出入口から入ったのだが、今回は梅田厩舎に近い東側から入ってみた。


梅田智之厩舎は東厩舎地区の一番端のブロックで、次の調教までの時間があまりない騎手などに調教を乗ってもらった時などは、東側の逍遥馬道出入口の手前で待って担当馬を受け取るのが常。だからよくこの付近で馬が帰ってくるのを待っていた。
厩舎によっては、厩務員さんが歩いてこの逍遥馬道の頂上あたりにある、坂路コースの厩務員待機所までの往復、馬を引っ張って行く事もある。

下は柔らかなウッドチップで人間にとっては歩きにくい。しかも雨上がりで締まった地面に馬が歩きまくった後半などは固めでデコボコになり、脚を取られてとても疲れる。しかも行きはほとんどが上り坂で、馬の歩くスピードについて行くのは至難の技だ。
僕がここを馬を引いて歩くのは、坂路コースのスタンドで騎手などと馬の乗り替わりがある時や、僕らが引っぱらないと歩かない馬、うるさくて乗り手があぶない馬など、必要にかられてのみだった。
これを厩務員に毎日のように義務付けている調教師(引退含む)は、自分がこの逍遥馬道の上り坂を馬と一緒に歩いた事があるのだろうか?と、いつも思っていた。多分ないだろうな…




逍遥馬道のだいたい中間地にあるのは、坂路コースの厩務員待機所と調教スタンド、ウォーミングアップ用角馬場など。
その直前の右側の林の中に、僕達の秘密の場所があった。
それは、カブトムシやクワガタなどが多く集まる「秘密の木」だ。若い頃はよく夜にトラップをしかけて、長靴を履いて(毒蛇予防の為)虫取りに出かけた。知り合いの子供たちを連れて行ったこともある。「まだ虫たちおるんかなぁ…」と思い出しながら、そこを通り過ぎた。

坂路コースのゴール地点から少しの所には、厩務員さんの待機所があり、東側からならその手前に広い馬待機場所がある。
ここで厩務員が周りながら乗り手を待ったり、騎手や調教助手などが馬を乗り換えたりする。



僕たちがここまで馬を連れてきたり、2歳馬などが坂路調教の帰りにゲートへ行くのに付き添う時など、この待機所でTVモニターを見ながら待っている。
この待機所の前を坂路調教を終えた馬が、スピードを落として走っていくのだが、馬が止まらなく暴走して落馬する事故が多発する場所でもある。

厩務員待機所を右手に見ながら進むと、左側に坂路コースの調教スタンドがある。
調教師、JRA職員、JRA獣医などの関係者が調教馬を観る場所だ。

だいたい、このあたりが逍遥馬道の中心くらいで、坂路コースの頂上あたりになる。
ということは、ここから西はゆるやかな下りが続き、坂路コースのスタート地点があるという事だ。

次回は、調教スタンドから西側、坂路コースのスタート地点方面などを紹介したい。
つづく