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 前回このシリーズでは、冬のジェットヒーターを紹介したが、今回はその第2弾をお送りする。

 僕たち厩務員が馬の体や脚を水やお湯で洗う時は、馬洗い専用の手袋みたいなやつか、馬洗い用のブラシ、タワシなどを使い、稀に素手で洗う人もいる。
 そして「汗コキ」と呼ぶ馬専用の馬具で、濡れた馬の体の水気を取る。

馬洗いの必需アイテム、たわしと汗コキ。この汗コキはパイプと金属で作ったものだが、プラスティック製や硬質ゴムで作られた物もある。

 その後、乾いたタオルで馬の体から脚にかけて水分を取っていくのだ。
 この時に活躍するのが、今回の「吸水タオル」だ。

 僕が馬社会に入った1980年代は、馬の体全体の水分を取るのはバスタオルで、脚などは普通の人間の身体洗いタオルなどで拭いていた。
 当然一度拭いたら濡れてしまうので、それをまた絞って使っていた。それらのタオルは仕事の合間に乾かすが、雨が続くとずっと湿ったままだ。

 冬の寒い時期は毛も長いし、濡れてから絞ったタオルなどで拭いても水分はなかなか取れない。ジェットヒーターも無かった時代は、冬に濡れた馬を乾かすのが本当に大変だった。

 女性など握力のない人達は、タオルや雑巾を絞る事自体が大変だ。絞ってもほとんど水が出ないし、2回目からは濡れタオルで拭いているようなもので、冬場などはなおさら辛かった。

 1990年代に入った頃だっただろうか……。
 どこの誰が始めたかは知らないが、車を洗ってから水分を取る車専用の「吸水タオル」を馬に使う人達が現れた。

初めて馬に使われたのは車用の吸水タオル。これは今の物だが、昔とほぼ同じ物と思われる。
これも今の車用のお徳用吸水タオル。昔のほうが値段が高かったと思う。

 誰だったか覚えてはいないが、厩舎の同僚が
「これ、他の厩舎の奴が使ってたんやけど、めちゃめちゃええでー!ちょっと高いけどな……」
と言って、吸水タオルを皆に勧めてきた。

 たしかに女性など、そんなに握力が無い人でも絞ったらそこそこ水分が抜けるし、吸水力も抜群。
 馬の脚を拭くのにはもってこいで、洗った馬の全身を乾いたバスタオルで拭く前に水分を取っておくのにも最適だった。

このように吸水タオルで馬の脚を拭く。
この吸水タオルは一度濡れてから絞ると湿ってはいるが、吸水力はほとんど変わらない。

 このタオルが世に広まった時期、ほとんどの厩務員さんがカーショップなどに行って実費で買っていた。
 メーカーによって値段は違うが、1枚700〜1000円くらいしていたと思う。
 毎日使っていると吸水力は落ちてくるが、半年くらいは持つし、僕は常に2つくらいストックしていた。

 だが今は、自費で買う人はほとんどいないと思われる。

 トレセン内の馬具屋さんなどが、車用より更に高級な吸水タオルを置くようになったからだ。

 もちろん仕事で使うものだし、厩舎(調教師)の経費として買ってもらえる。

 それは、日本を代表するスポーツメーカーが販売している、スイミングなどで人間が身体を拭くのに使う吸水タオルだ。

 ちなみに近年このメーカーは、馬服やラグ(冬場の調教で腰から尻に当てる布)など、馬専用の道具も作っている。

馬具屋さんでも購入できる、最近主流の吸水タオル。これはスイミングなどで使う人間用。

 もう今や競馬だけではなく、乗馬など全ての馬の社会で使われていると思われる、この吸水タオル。
 これを最初に使おうと思いついた人、広めた人は誰なのか、本当に知りたい。

今やあらゆる厩舎の、どんな人の馬洗いセットの中にも吸水タオルがある。
厩舎のバケツに入っている吸水タオル。

 この人達にも、前回のジェットヒーターと同じく、競馬界厩舎従業員栄誉賞を与えよう!

田中一征 (Kazuyuki Tanaka)

1960年大阪府泉大津市生まれ
JRA栗東トレーニングセンターで、1983〜2007伊藤雄二厩舎、2007〜2025梅田智之厩舎に厩務員として在籍し、2025年7月に定年退職。

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