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 冬の小倉開催は近年6週間。

 関西馬のほとんどが栗東で追い切ってから金曜か土曜出発の、いわゆる直前輸送競馬だ。

 関東馬は基本滞在競馬で、関西馬も一部、滞在している厩舎もある。障害馬などは木曜入りして、馬場見せなどのために調教する時もある。

 朝、僕たちが馬運動をしていると、そういった滞在馬などがゼッケンを付けて調教しているのを見かける。

小倉競馬場の開催日の朝早くの厩舎構内。滞在馬が調教前の運動をしている。

 僕が小倉競馬の出張で週をまたいで滞在したのは5〜7回程度で、もうかなり前のことだ。
 そんな昔を思い出しながら、朝の仕事の合間に、調教スタンドなど小倉厩舎構内をぶらぶら散歩した。

小倉競馬場の調教スタンド。本スタンドからだと、ちょうど向正面側にある。
調教スタンド内の、厩務員たちが調教を見る場所。最後にここで調教を見たのは、障害馬の練習で木曜入りした10年くらい前だと思う。

 日曜の朝、この日レースの馬は長めに運動したが、前日レースの馬は馬体チェックと軽めの運動。4時頃から始めて7時過ぎに終了。

 最後の小倉競馬場での朝ということもあって、久しぶりに土日の朝だけやっている、うどん屋「よもぎうどん・いわさき」へ行ってみた。

 このお店は競馬場の向正面の住宅街の中にある。朝早くからかなりの人が並んでいて、ほぼ切れ目がなくお客さんが来る。

小倉競馬場の向正面の壁沿いにあるうどん屋「いわさき」。土曜と日曜の朝6時から、食材が無くなるまで営業している。(競馬場のパトロールタワーが見える)

 店名はどこにも書いてないし、入ってもずっと満席で忙しく、店員はこちらをほぼ無視だ。
 注文するタイミングも難しく、勝手に早く言うと怒られるし、言わずに聞いてくれるのを待っていると、ほったらかしだ。
 注文が通ったかどうかも分かりにくく、初めて行った人は、この店のクセの強さと店員の上から度合いに驚くことだろう。
 初見ではかなりハードルの高いお店だが、とても美味しいので、心が穏やかでキレない人は是非行ってみてほしい。
 店に入ったら、他のお客さんを見て勉強してから注文しよう。

メニューは程よいタイミングで自ら注文して、おにぎりなどは自分で棚から取る。注文を聞いてくれると思って黙っていると、一生食えない。
この日注文したのは、よもぎうどんの肉うどん(並)。久しぶりだったので、注文するタイミングを間違えて怒られた。

 うどん屋さんの帰り、向正面から見て競馬場とは逆の道を、バイクで走ってみた。
 かつて僕が小倉競馬場出張の際、ランニングコースとして走っていた紫川周辺は、昔と何も変わらない風景だった。

2泊以上の小倉競馬場出張の時、よく夕方走っていた紫川周辺。走っていてカワセミを見つけたこともあった。

 厩務員として最後の小倉のレースは、他の人の担当馬だったが、地下道〜装鞍所〜パドック〜レースと、小倉競馬場の情景を目に焼き付けながら、レースをじっくり楽しませてもらった。

この日の5R出走前のケイアイテア(他の人の担当馬)。
小倉競馬場名物の、モノレールの車内の人から丸見えの装鞍所。

 他の人の馬をレースに連れてくると、かなり気を使う。
 自分の馬を含めて3頭とも、無事怪我なく帰ってきてくれてホッとした。

 2泊3日の小倉遠征も無事終わり、帰り間際に食堂の売店のお土産コーナーへ。
 自分の担当馬を栗東に残して来た場合、ほとんどの人がお礼の意味を込めて、厩舎の大仲部屋(厩舎内にある、皆が集まる休憩室)へ、お菓子などのお土産を買って帰るのだ。
 外のお店や、帰りのサービスエリアで買う時もある。

 もちろんルールでも強制でもないので、そんな行為を一切やらない人もいる。

 そんな人が、他の人が買ってきたお土産を大仲部屋でパクパク食っているのを見たりすると、その無神経さに呆れてしまう。

 どんな社会にも、そういう人って必ずいるよね……。

小倉競馬場厩務員食堂の一角にある、福岡で有名なお菓子屋さんの出張お土産コーナー。帰りまでの時間がない時は、ここで買うか、高速道路のSAで買うかだ。

 レース終了後、帰りの馬運車内での食料を買いにコンビニに行ったら、この日が「節分」だと気付いた。
 酒のアテと恵方巻きを買い、馬運車の中で「黙ってかぶりつく」という一連の所作を終え、帰途についた。

帰りの馬運車は、僕が連れてきた3頭だけの貸し切りだった。
馬運車内で恵方巻きを黙って食べた。願い事は「定年まで人馬無事に」だった。もちろんビールとアテも。 小倉競馬場。

 北海道の競馬場に比べたら、滞在した日数は遥かに短いが、とても大好きな出張先だった。

 今年は冬季オリンピックがあるので止めておくが、いつかお客さんとして、遊びに行かせてもらうことにしよう。

田中一征 (Kazuyuki Tanaka)

1960年大阪府泉大津市生まれ
JRA栗東トレーニングセンターで、1983〜2007伊藤雄二厩舎、2007〜2025梅田智之厩舎に厩務員として在籍し、2025年7月に定年退職。

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