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2024年11月21日 (木)

 「レンズフレア」という言葉を知ってますか?

 太陽光などの強い光に対して、レンズ内で反射が起こる現象のことで、画質の低下や部分的に色味が変わるなど、写真にとっては大きなマイナスの要素である。ワタシの知っている限り、レンズフレアは嫌われ者であり、カメラマンにとってやっかいな現象(敵)だ。

 そのやっかいなレンズフレアの印象が変わったのが、2014年の新春のことである。

 正月の京都競馬場開催は日が沈むのも早く、最終レースになると4コーナー側に太陽が沈む。この日は好天のまま最終レースを迎え、レースを終えた人馬を撮ろうと、逆光で太陽と正対して、騎手のシルエット感や鬣(たてがみ)が光る感じが撮れればいいなと狙った。その時にファインダー越しに見慣れないフレアが現れた。おもわずシャッターを押しモニター画面で確認すると、こういう写真が撮れた。

 これはこれでオモロイやんか!となったのだ。

2014年新春に京都競馬場で撮れたレンズフレア©Shuhei-Okada.com

 その後、別の同じ焦点距離のレンズを用いても、このような現象は起こらず、この時にたまたま起こったのかと思った。しかし、この時のレンズを用いて太陽と正対するような逆光で撮ると度々発生するようになった。

 それまでは極力、フレアを抑える為にフードで光を遮ったり、太陽に正対せずに少し角度をずらすなど工夫をしたが、逆にこのフレアを味方に付けて、より面白い写真を狙えばいいんじゃね?と発想が180度変わったのだ。

 その後も逆光で面白みのある写真を狙うも、中央競馬ではなかなか太陽と正対するタイミングが合わず、作品のようなものは撮れずにいた。しかし、昨年秋(2023年)にようやく撮る機会に恵まれた。アメリカのサンタアニタ競馬場で行われた、ブリーダーズカップ競走の撮影に出掛けた時、狙い通りのシーンに出会えたのだ。

 サンタアニタ競馬場で朝の調教を撮影した際、朝陽が昇る時間になると4コーナー側へ移動して真正面から朝陽が昇るのを待った。狙い通りに正面から太陽が昇り、調教を終えて引き上げる馬と太陽の光によるフレアが面白く、ようやくレンズフレアを味方につけた絵になった瞬間であった。

2023年秋にアメリカのサンタアニタ競馬場で撮れたレンズフレア©Shuhei-Okada.com

 それっぽい雰囲気の写真が撮れたので、ワタシがここ数年毎年出品している川崎市鎮座の稲毛神社の令和6年【有名人慈善絵馬展】に提出した。

※「有名人慈善絵馬展」とは、各界の有名人により描かれた絵馬を入札により希望者にお分かちし、益金を社会福祉に役立てて頂く慈善事業です。

 毎回入れている「天下泰平」を入れプリントをして、絵馬に貼り付けたものがこれです。

 やっかいな現象と思っていたレンズフレアが味方になってくれて、見た人を「おぉー」と思わせる作品に変わったのだ。

令和6年有名人慈善絵馬展に提出した絵馬©Shuhei-Okada.com

 漫画の世界でもあるように、敵と思っていたものが味方になると、とても頼もしい頼れる奴になるというのを実践した感じだ。

 固定概念に囚われず、引き続き自分のアングルを見つけて、魅力的な面白い写真を撮っていきたいと思うのである。

岡田修平

1969年 大阪府池田市生まれ
工芸高校写真工芸科、在学中に川本武司氏に師事。
1987年の卒業と同時に「JRA関西広報カメラマン」として撮影を始める。
また師匠の勧めで大阪芸術大学写真学科に進学、卒業後フリーカメラマンとして活動。
競馬をメインフィールドに雑誌、ポスター、カレンダー、DVD等に作品を発表。
フランス凱旋門賞をはじめ、海外大レースの撮影に積極的に参加。
最近は、各インターネット媒体コンテンツへの写真提供もこなし、更なる飛躍を目指している。

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