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2024年11月21日 (木)

 競馬情報専門誌「優駿」にて表紙をめくってすぐ(3ページ)の、競馬場の小さな風景というコーナーの挿し絵写真を、それまで担当されていた師匠から譲り受ける形で引き継いで89年3月号から92年2月号まで3年間担当した。

 師匠から引継ぎして迷惑をかけないか? 毎月、絵になるような写真が撮れるのか? 話を聞いたときは嬉しさ半分、プレッシャー半分が正直な気持ちであったが、憧れの雑誌で連載を持てるというモチベーションで自分のキャリアのステップアップするチャンスと捉えて前向きに動こうと思った。

優駿「競馬場の小さな風景」挿絵写真89年3月号©Shuhei-Okada.com

 撮影に出掛けた競馬場を隅々まで歩いて、四季折々の色んな物やオブジェなど、今まで見逃していたものを新たな発見をしながら試行錯誤して駆け抜けた3年間であった。

 中央競馬の競馬場でこんな場所あった?と思わせるようなシーンを自分のアングルで表現しており、若くして(当時20歳)月刊誌での連載を持たせてもらい大きな経験を積ませてもらった。

優駿「競馬場の小さな風景」挿絵写真一覧(89年3月~90年10月号)
「競馬場の小さな風景」挿絵写真一覧(90年11月~92年2月号)©Shuhei-Okada.com

 写真が掲載された優駿誌には撮影競馬場が載っておらず、近しい知人は毎月「どこの競馬場で撮りました?」と聞いてくるほどだった。

 後輩の競馬カメラマンがアマチュア時代にこのコーナーをスクラップしており、後に「毎月楽しみにしていました!」と言われて影響を与えていたことも後で分かった。

 またJRA職員用の社内誌「たてがみ」の撮影担当をしていた職員も、たてがみに掲載する為の競馬場の挿し絵写真を撮る必要があり、よく場内で会ったが「毎月参考にさせてもらってます!」と、言われる事が多かった。

 その彼とは時に並んで撮る事もあったが、当時はフィルムで撮っていたので、今のデジタルと違いその場でモニター画面を見せる事も出来ずに、誌面を楽しみにしてて下さいね、とその後に掲載誌を見て「アレを狙ってたんですね~」と感心された。

 現像後の仕上がりをイメージしての撮影はしていたが、現像から仕上がったフィルムを見ると時には狙い通りにいったり、時にはイメージと全然違っていたりと、フィルム時代の懐かしい苦労を思い出す。

 実際の撮影では函館競馬場では4コーナー側の公園の滑り台の上に登って撮影した。

 小倉競馬場では馬主受付の入り口のガラス面に移りこむ足立山を狙ったりして、自然と体が動くようになった。

 今までに無かった着眼点を見つけ、楽しみながら撮影する日々であった。

函館競馬場 優駿「競馬場の小さな風景」挿絵写真90年8月号
小倉競馬場 優駿「競馬場の小さな風景」挿絵写真90年7月号©Shuhei-Okada.com

 この経験が今でも活きていて、自分のアングルを見つける楽しさは今でも続いている。

 現在は、競馬場の風景=馬の居る風景、として競走馬と絡めながら光の陰影であったり、芝生の緑、青空、等、その時々での面白いアングルを見つけて撮るようにしている。

 もちろん海外の競馬場に行っても、このスタンスは変わらずで、その競馬場の良いシーンを切り取って作品になるような写真撮影を心掛けている。

 中でも初めて行く競馬場はワクワク感しかなく、先ずは一通り歩いての散策から始め、自分のアングルを見つけては「ニヤリ」とシャッターに指を伸ばす。

フランス・シャルトル競馬場©Shuhei-Okada.com

 今の撮影の原点となっている「競馬場の小さな風景」は、自分の中で大きな飛躍となって今に続いている。

岡田修平

1969年 大阪府池田市生まれ
工芸高校写真工芸科、在学中に川本武司氏に師事。
1987年の卒業と同時に「JRA関西広報カメラマン」として撮影を始める。
また師匠の勧めで大阪芸術大学写真学科に進学、卒業後フリーカメラマンとして活動。
競馬をメインフィールドに雑誌、ポスター、カレンダー、DVD等に作品を発表。
フランス凱旋門賞をはじめ、海外大レースの撮影に積極的に参加。
最近は、各インターネット媒体コンテンツへの写真提供もこなし、更なる飛躍を目指している。

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