UMATO

2024年09月19日 (木)

 島根県隠岐郡西ノ島町にある景勝地 摩天崖。海抜257mの大絶壁は海蝕作用で出来た崖では日本有数の高さを誇り、大山隠岐国立公園に指定されている。

 ここを訪れたのは20代前半の時で師匠がライフワークとしていた、万葉の歌人が当時のこのような景色を見ながら歌を詠んだシーンを、写真と歌で本にする「小倉・百人一首」の手伝いで、師匠の代わりに撮影に向かったからだ。

©Shuhei-Okada.com
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 日本の夕陽100選にも選ばれている風光明媚な摩天崖。西側の海に沈む夕陽が素晴らしく、港の近くに取った宿に荷物を置き、カメラ一つ持参して日没の1時間半前にタクシーで現地入り。当時は携帯電話も無く運転手さんに帰りのタクシーを頼みたかったが、何時に撮影が終わるか分からないので諦めて帰りは歩く覚悟で撮影に専念した。

 インターネットなども無い時代、ガイドブック等での予備知識として崖が凄い高く、夕陽が綺麗で国立公園に指定されてるというくらいしかなかった。現地につくと噂通りの絶景で夏なのに風が涼しく、気持ち良さに感動しているのも束の間。よく見ると放牧されている馬がたくさん居るではないか!?

©Shuhei-Okada.com
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 馬の体型はサラブレッドとは真逆で、かなりふっくらとしており、でっかい馬だった。

 野生で馬が居たのかなと思った(在来種で隠岐には居ないはずだけど)、後で分かったことであるが、この馬たちは食肉用に飼育放牧されている馬たちで、人間にはお構いなしに草を嗜んでいた。ワタシは仕事柄馬肉を食べないが、高たんぱく低カロリーのヘルシーなお肉として人気を博しており、命を頂いてるという事実に感謝して食べてもらいたい。

©Shuhei-Okada.com
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 これは、絶景+夕陽+馬の撮影チャンス!ということでバシバシ撮影した。こちらの期待以上の素晴らしい夕焼けにも恵まれた。

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 絶好のシーンに手応えを感じつつ、撮影に熱中していると日没を迎えてしまった。みるみるうちに辺りは暗くなってしまい、ほぼほぼ真っ暗な状態になってしまった。

帰りは山道を1時間くらいかけて歩いて下る覚悟でいたが、いざ真っ暗になると泣きそうになった。公衆電話もなくタクシーも呼べないとなると歩くしかないな…

 と思った矢先に、山に上ってくる車のヘッドライトが見えた!

 この摩天崖に来る人だった。これはワンチャン乗せてもらえるかも?と思って近づいてくる車を見ると大きなマフラー音をさせ、ウイングの付いたシルビアで、車が1台も無い駐車場に止まった。

 ラッキーと思ったものの、中に派手な若者4人が居て、どう見ても地元のヤンキーやん!これは下手に絡むよりも歩いた方が賢明かな?と思っていたら、そのうちの一人が「お兄さん、こんな時間に一人で何してるん? 車無いけど帰れる??」と声をかけてくれた。お言葉に甘えてシルビアの後部座席にぎゅうぎゅうになりながら乗せてもらい、無事に宿に帰る事が出来た。

 道中10分くらいの中で彼らと仲良くなり、宿で夕食をいただいた後に、さっきの4人と合流し、カラオケボックスで大盛り上がりしたのが昨日のように思い出せる。泣きそうなあの時に乗せてもらって、本当に助かりました。あの時の4人ありがとうございました。(ワタシの恩人です)

「小倉・百人一首」に掲載された摩天崖のページ©Shuhei-Okada.com

 わたの原 八十島かけて 漕ぎ出ぬと 人には告げよ 海人の釣り舟「参議篁(さんぎたかむら)」

岡田修平

1969年 大阪府池田市生まれ
工芸高校写真工芸科、在学中に川本武司氏に師事。
1987年の卒業と同時に「JRA関西広報カメラマン」として撮影を始める。
また師匠の勧めで大阪芸術大学写真学科に進学、卒業後フリーカメラマンとして活動。
競馬をメインフィールドに雑誌、ポスター、カレンダー、DVD等に作品を発表。
フランス凱旋門賞をはじめ、海外大レースの撮影に積極的に参加。
最近は、各インターネット媒体コンテンツへの写真提供もこなし、更なる飛躍を目指している。

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