UMATO

2024年10月31日 (木)

一番好きな馬は何ですか?と聞かれたら「ヤエノムテキ」と即答する。

小学生の頃、一般誌に載っていたテンポイントの写真を見て、それまで動物園で見ていたシマウマやポニーとは違うサラブレッドの美しさを初めて知った。

それからしばらく経って競馬中継を見るようになると、ある事に気づいた。

ほとんどの馬が茶色(鹿毛)や黒色(黒鹿毛・青鹿毛・青毛)をしており、テンポイントのような栗毛の馬がとても少なかったのだ。

1987年からプロカメラマンとして競馬を撮り始めても、栗毛の活躍馬が少なくタマモクロス、オグリキャップといった芦毛ブームが到来しつつあった。

ちょうどその頃にある夢を見た。そこには筋骨隆々の栗毛の馬が立っており、4本脚に白いハイソックスを履いていた。綺麗な流星も持ち合わせたその馬が、皐月賞の優勝レイを掛けていたのだ。

月日は流れて1988年の2月27日、阪神競馬場の新馬戦(ダート1700m)でヤエノムテキが2着馬に7馬身差をつけて快勝した。口取り撮影時に近くで見て驚いた!

あの夢で見た馬にそっくりだったのだ。 口取り撮影が終わった時、たまたま中学時代の競馬好きの同級生が遊びに来ており、その彼に「この馬、皐月賞勝つで!」とワタシは言い放った。2月27日デビュー(しかもダート戦)で勝ったとはいえ、2ヶ月弱後の芝のG1レースを勝つという無謀な発言だったが、自信はあったのだ。

夢の話が現実となり、皐月賞を制したヤエノムテキ! 当時のワタシはもうヤエノムテキに夢中であった。

1988年皐月賞©Shuhei-Okada.com
皐月賞の優勝レイを掛けるヤエノムテキ©Shuhei-Okada.com

その後、G2レースは3勝するもG1レースでは善戦止まりに悔しい思いをした。

しかし、1990年の第102回天皇賞(秋)で久しぶりのG1勝利を手にする事となる。

コース適正とG1レースでの好走実績から3番人気で出走したヤエノムテキ。秋らしい好天の中で天皇賞(秋)のスタートが切られた。好位の内ラチ沿いをコースロス無く走り、直線の坂下では先に抜け出した外を走る1番人気のオグリキャップを捉えると、内ラチ沿いをするすると駆けて、最後は脚色がいっぱいになるも差し馬メジロアルダン、バンブーメモリーの追撃を封じて府中の2000mのG1レース二勝目を挙げた。

久しぶりの勝利が府中のG1レースでレコードタイムのおまけ付き。当日は無茶苦茶嬉しかった。この復活劇ももちろん嬉しかったが、更に嬉しい後日談がある。

ワタシが競馬カメラマンとして一番やりたい仕事と公言している「ヒーロー列伝のポスター」、そして毎年写真が掲載されたいと思うJRAカレンダーの両方にこの時の天皇賞(秋)の写真が採用されたのだ。また優駿増刊号の「ターフヒーロー」にも採用されて、我が子を撮影する親のような愛情を持って撮った写真が評価されたのだと、勝手に解釈している。

ポスターに掲載された写真©Shuhei-Okada.com
カレンダーに掲載された写真©Shuhei-Okada.com
ターフヒーローに掲載された写真©Shuhei-Okada.com
©Shuhei-Okada.com

 

ヒーロー列伝のポスター©JRA ©Shuhei-Okada.com

 

カレンダー(写真以外切り取って保存していた)©Shuhei-Okada.com

我が愛馬(ワタシが勝手に言ってるだけ)の晴れの舞台の決定的なシーンを色々な形として残すことができ、カメラマン冥利に尽きる一戦となった第102回天皇賞(秋)。

今年の天皇賞(秋)も未来に残せるような写真を撮りたい!と願う。

岡田修平

1969年 大阪府池田市生まれ
工芸高校写真工芸科、在学中に川本武司氏に師事。
1987年の卒業と同時に「JRA関西広報カメラマン」として撮影を始める。
また師匠の勧めで大阪芸術大学写真学科に進学、卒業後フリーカメラマンとして活動。
競馬をメインフィールドに雑誌、ポスター、カレンダー、DVD等に作品を発表。
フランス凱旋門賞をはじめ、海外大レースの撮影に積極的に参加。
最近は、各インターネット媒体コンテンツへの写真提供もこなし、更なる飛躍を目指している。

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