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2024年12月27日 (金)

「緑の芝生で有馬記念」

 当時のJRA理事長は、芝コースを冬場に枯れる野芝(日本の在来種)から青々とした緑の芝生(洋芝)に変貌させた。野芝に洋芝をオーバーシードする技術を使い、緑の芝生でのレースを1年間見ることが出来るようになったのだ。

 変貌した芝生で行われた有馬記念が、第37回(1992年)のことである。

 前年の有馬記念の芝生と比べると一目瞭然である。

1991年有馬記念©Shuhei-Okada.com

 この年の有馬記念は、ジャパンカップで鮮やかな走りを見せたトウカイテイオーが1番人気。菊花賞でミホノブルボンの無敗の三冠を阻止したライスシャワーが2番人気。武豊騎手騎乗のヒシマサルが3番人気で、この3頭が上位人気を形成、14万人を越えるファンが中山競馬場に詰めかけた。

 大歓声の中で、緑の芝生での有馬記念のスタートが切られた。スタートして果敢に自分の形に持ち込んだのは、この年の宝塚記念を勝った15番人気のメジロパーマー!

 途中からダイタクヘリオスもハナを主張し、2頭の激しい先行争いが続き、スタートで後手を踏んだ1番人気のトウカイテイオーは後ろからの競馬。

 2周目の向こう正面では後続を20馬身ほど引き離す、ダイタクヘリオスとメジロパーマー。

 最後の直線でダイタクヘリオスが脱落するも、メジロパーマーは脚色が衰えずに逃げ切り態勢、宝塚記念の再現かのようなセーフティーリードと思えた残り100mで内から猛烈に追い込んできたのは5番人気のレガシーワールド、最後は二頭が並んでゴール! 馬連3万円を超える大波乱の決着となった。

 写真判定の結果、外のメジロパーマーがハナ差粘っており、宝塚記念に続いてのグランプリ連覇となった。

©Shuhei-Okada.com
©Shuhei-Okada.com

 内と外のハナ差の大接戦に困惑も、撮影中にフレーム内に2頭がいるのが分かったので心配はしなかった。

 が、しかしここで大事件が起こった。

 当時の撮影はフィルムを使用しており、36枚撮りのフィルムを入れて、レース写真を撮り切ると、モータードライブ(連射装置)の電動巻き戻しでフィルムを巻き戻す仕組みであった。

 この時も、レース後すぐに巻き戻しボタンを押して作動させ、ウイニングランの撮影位置に移動して、新しいフィルムに詰め替えようと蓋を開けた。

 しかし、その時に裏蓋を開けるとフィルムが残っていた…

 フィルムケースに収まっていなければならないはずの、撮影済フィルムがビローンと見える!?

 え? 何々?? と思いながらもカメラマン魂を瞬時に発揮。これはマズイと蓋を閉めて、手動で巻き戻して、フィルムを変える。

 体感1.数秒だと思うが、蓋を開けて露光させた恐ろしい時間が過ぎた。

 12月も終わるという時期に嫌な汗が背中を流れた。神に祈るしかないまま現像の仕上がりを待った。

 結果36枚中、10数枚はアウトであったが、使える写真も残っており、胸をなでおろした。

©Shuhei-Okada.com
©Shuhei-Okada.com
©Shuhei-Okada.com
©Shuhei-Okada.com
©Shuhei-Okada.com
©Shuhei-Okada.com

 1992年の有馬記念は、有馬記念史上初めて緑の芝生で行われたレースとなった。

 しかし、ワタシの中ではレース写真の巻き戻し操作ミスか、移動中に何かが当たってのストップによって、フィルムを巻き戻す前に裏蓋を開けてしまい、レース写真を感光させてしまったことによる、冷や汗をかいた有馬記念となった記憶しかない。

岡田修平

1969年 大阪府池田市生まれ
工芸高校写真工芸科、在学中に川本武司氏に師事。
1987年の卒業と同時に「JRA関西広報カメラマン」として撮影を始める。
また師匠の勧めで大阪芸術大学写真学科に進学、卒業後フリーカメラマンとして活動。
競馬をメインフィールドに雑誌、ポスター、カレンダー、DVD等に作品を発表。
フランス凱旋門賞をはじめ、海外大レースの撮影に積極的に参加。
最近は、各インターネット媒体コンテンツへの写真提供もこなし、更なる飛躍を目指している。

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