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2025年03月14日 (金)

 今週は中京競馬場で金鯱賞(芝2000m G2)が行われる。

 今でこそ、3月の中京開催を経て4月に行われるG1レース「大阪杯」へのステップレースとして定着しつつある金鯱賞。

 しかしながら昭和世代の人間としては、金鯱賞といえば5月終わりに行われるレースであり、6月の宝塚記念へのステップレースという印象が未だに根強く残っている。

 ワタシが過去に撮影した金鯱賞の中で、一番印象に残っているのが第34回(1998年)金鯱賞である。

 5月の強い日差しが照りつける中で行われた金鯱賞は明け4歳を迎えてから3連勝中(重賞連勝中)のサイレンススズカが出走。

 サイレンススズカを一目見ようと、朝から多くのファンが中京競馬場に足を運んだ。

金鯱賞のパドックで撮影©Shuhei-Okada.com

  4歳になって自分のペースで進む積極的な競馬で活路を見出したサイレンススズカ、この金鯱賞でもスタートから先手を奪い前半の1000mを58.1秒で通過し快足ぶりを披露。

 3コーナーでは場内のターフビジョンが後続との差によって、いつもとは違う画角で写し出されて歓声があがった。

 4コーナー手前で2番手以下をさらに大きく引き離し、最後の直線に向くと大歓声が送られた。

 ラストスパートとなる直線に向いても、そのまま脚色が衰えるどころか、残り200mで逆に後続を突き放して先頭でゴール!

©Shuhei-Okada.com
©Shuhei-Okada.com

 1:57.8という凄まじいレコードタイムで駆け抜けて、前走の小倉大賞典に続くレコードタイムでの優勝となった。

 大きく離されて2着でゴールしたミッドナイトベットは、サイレンススズカから1.8秒遅れてのゴールであった。

©Shuhei-Okada.com

 破竹の4連勝で宝塚記念へと駒を進めたサイレンススズカ。

 エアグルーヴ、ステイゴールド、メジロブライトといったG1レースで実績のあったライバルたちを差し置いて1番人気に支持されると、ここでも快足を披露して5連勝でG1レース初制覇を成し遂げた。

 夏を越えて秋の初戦、天皇賞(秋)のステップレースの毎日王冠でも強い3歳馬二頭(エルコンドルパサー、グラスワンダー)を子ども扱いして、連勝を6に伸ばす。

 競馬雑誌や競馬ファンも天皇賞(秋)で、どんな逃げ方で勝利を手繰り寄せるのか注目が集まった。

 今や競走馬として完成の域に近付いているサイレンススズカが負けるとするならばアクシデントしかない、と言わしめるほど他陣営は白旗ムードを漂わせていた。

 そんな中で迎えた第118回天皇賞(秋)で、いつものように快足を飛ばして後続を大きく突き放して気分良く快走。

 金鯱賞や毎日王冠の再現かと思われた3〜4コーナー途中で馬体に故障が発生し、悲劇が起こった。

 せめて命だけでも、せめて種牡馬として子供を残して欲しい、そんな願いも空しく突然天国へと旅立ってしまった。

 レースに行くと内に秘めた気性が激しいことから、レースでは緑のメンコがトレードマークだったサイレンススズカ。

 栗東トレセンでの普段の表情はとても大人しく、うるさいところなど見せたことが無かった。

栗東トレセンでのサイレンススズカ©Shuhei-Okada.com
とても可愛らしい顔をしていた©Shuhei-Okada.com

 施行時期は変わったが、「金鯱賞」といえばハイペースで逃げて、さらに直線で後続を突き放したサイレンススズカの勇姿が今でも思い出される。

岡田修平

1969年 大阪府池田市生まれ
工芸高校写真工芸科、在学中に川本武司氏に師事。
1987年の卒業と同時に「JRA関西広報カメラマン」として撮影を始める。
また師匠の勧めで大阪芸術大学写真学科に進学、卒業後フリーカメラマンとして活動。
競馬をメインフィールドに雑誌、ポスター、カレンダー、DVD等に作品を発表。
フランス凱旋門賞をはじめ、海外大レースの撮影に積極的に参加。
最近は、各インターネット媒体コンテンツへの写真提供もこなし、更なる飛躍を目指している。

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