2000年代に入り牝馬の活躍機会が増えて秋華賞の新設、エリザベス女王杯の古馬解放と改革が進んだ。
春にも古馬牝馬の目標になるレース整備が図られ、ローテーションの再編を経た結果。2006年に4歳以上牝馬の春のチャンピオン決定戦、という趣旨で新設されたヴィクトリアマイル(1600m G1)。
あれから20年、数々の名牝がここで名勝負や好レースの勇姿を魅せてくれた。その結果、春の古馬牝馬チャンピオンの存在意義がどんどん大きくなって現在に続いている。
ワタシが撮影した過去のヴィクトリアマイルの中で最も衝撃を受けたのが、今回紹介する第4回(2009年)のウオッカが勝利したレースである。
父:タニノギムレット 母:タニノシスター(栗東・角居勝彦厩舎)
生涯成績26戦10勝(うちG1、7勝)
2歳時に阪神ジュベナイルフィリーズを制し、最優秀2歳牝馬を受賞。
3歳時に64年ぶりとなる牝馬によるダービー(東京優駿)を制し、世代の頂点に立つ。
4歳時に安田記念と天皇賞秋を制し、最優秀4歳以上牝馬と年度代表馬のタイトルを獲得。
そして迎えた5歳時のヴィクトリアマイル、ドバイで2戦(5着、7着)した帰国初戦に単勝支持率48.2%、1.7倍という圧倒的1番人気に支持されて出走してきた。


武豊騎乗で迎えたこのレース、スタートから好位につけてレースを進める。4コーナーを3番手で進むと、そこからラストスパート。


残り400mで先頭に並びかけると、そこからアッという間に後続をグングンと引き離す。ゴール板では7馬身差という決定的な着差をつけて完勝。


レースタイムの1:32.4はコイウタが樹立したレースレコードを0.1秒更新。この勝利はG1、5勝目となり歴代の牝馬G1最多勝メジロドーベルに並び、牝馬最高獲得賞金記録も樹立という記録ずくめの勝利となった。


ウオッカのG1勝利レースは全て撮影しているが、撮っていて一番のびのびと楽しそうに走っていたのがこのレースだった。
5月の府中、新緑に包まれた絨毯(じゅうたん)を弾けるようなフットワークで軽やかに駆け抜けて見せた。本来の実力を存分に発揮し、輝きを放った走り、牡馬とも互角以上の戦いをしてきた彼女には牝馬どうしではここまで決定的な差がつくものだと思い知った。



この後も安田記念を連覇し、ジャパンカップも勝利して最終的にG1レース7勝目を挙げた。ジャパンカップの勝利は日本調教馬による初の牝馬が制したレースとなった。
この年(2009年)はヴィクトリアマイルを含む、G1レース3勝を挙げて2年連続の最優秀4歳以上牝馬、年度代表馬のタイトルを獲得した。
人気と実力を兼ね備えて、素晴らしい能力を見せたウオッカ。G1レースでは際どい着差の勝利が多かった中で、悠々と楽しそうに走った2009年のヴィクトリアマイル。
この時の彼女の走りが、つい最近のように感じるのもワタシが歳を重ねたからであるのか。今年のヴィクトリアマイルも数年後には、ついこないだと感じるような記憶に残るレースを期待したい。