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2025年10月14日 (火)

 10月の第一日曜日にフランス・パリの西側セーヌ川沿いにある、パリロンシャン競馬場にて開催される凱旋門賞。

©Shuhei-Okada.com

 過去に何度も世界のトップ100 G1レースで首位に輝くなど、ヨーロッパ競馬の最高峰のレースの一つに数えられている。日本の競馬ファンにとっても有名なレースだ。
 ワタシが初めて凱旋門賞の撮影に行ったのが、日本競馬界の至宝「ディープインパクト」が出走した2006年。
 無敗の三冠達成から、古馬になり重賞3連勝で挑んだ一戦。

 凱旋門賞を勝つためには、日本最強馬が挑む!
 このレースは撮影しておかないと一生後悔すると思い、重い腰を上げて向かった。それまでわざわざ海外まで競馬を撮影しに行くことなどなかった。
 行ってみると、同じ競馬でも全然違った。

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 ヨーロッパの伝統が詰まったような雰囲気と、ブローニュの森に隣接した広大な緑の敷地。
 全体的にゆったりとした時間が流れており、G1レースが開催されるというのになんだかおおらかである。
 1966年に完成した新スタンドも、この時点で40年経っており趣がある。

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 凱旋門賞のスタート地点には名物の風車もあり、テレビ中継で見ていた場所だと興奮した。

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 パドックにもたくさんの木があり、雰囲気が抜群である。

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 迎えた凱旋門賞で、一旦先頭に立つディープインパクト。
 しかし後続に差されて、3着でゴール。
 ディープインパクトによる、日本競馬界悲願の勝利とはならなかったが(3位入線も、その後失格)来て良かったと思えた。

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 この時の経験がその後、積極的に海外競馬の撮影に向かうきっかけとなった。

 今まで撮影に行った凱旋門賞の中で、勝利にあと少しで手が届きそう!というシーンが二度あった。

 一つ目は2010年、ナカヤマフェスタがアタマ差2着になった時だ。
 この年の宝塚記念を制し、前走のフォア賞2着から挑んだ一戦。
 もう一頭日本から参戦したヴィクトワールピサもニエル賞4着で、共に現地での前哨戦を走っての参戦となった。

 ナカヤマフェスタの鞍上、蛯名正義はエルコンドルパサーに騎乗し1999年の凱旋門賞で2着。
 ヨーロッパ最強馬のモンジューに半馬身差まで迫っており、その雪辱に燃える。

 残り400mで先に抜け出して先頭に立つ蛯名正義騎乗のナカヤマフェスタ、すぐ内からスパートするムーア騎乗のワークフォース。
 残り300mから二頭のマッチレースとなって、並ぶようにゴール!
 しかし内のワークフォースがアタマ差先に出ており、日本競馬悲願の凱旋門賞勝利はまたしても次年度以降への持ち越しとなった。

 最後の直線に向いてカメラを構え始めると、ナカヤマフェスタが抜け出して来た。
 「これは。ひょっとして!?」
 撮影に集中しながらも、脳内からアドレナリンが溢れる。

 残り300mからの壮絶なマッチレース、撮りながら祈るように「ガンバレ、ガンバレ!」と連呼する。

©Shuhei-Okada.com
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 過去にここまで興奮しながら撮ったことが無いほどのアドレナリンが出た。
 手に汗握りながら撮りつつも、内のワークフォースが出ているのが分かった。
 ゴール後のファインダーから目を離した瞬間、自然と涙が溢れた。

 悔し涙が流れつつ、引き揚げてくる各馬を撮影。
 長年競馬を撮影してきて、涙が流れたのはこの時だけだった。

つづく

岡田修平 (Shuhei Okada)

1969年 大阪府池田市生まれ
工芸高校写真工芸科、在学中に川本武司氏に師事。
1987年の卒業と同時に「JRA関西広報カメラマン」として撮影を始める。
また師匠の勧めで大阪芸術大学写真学科に進学、卒業後フリーカメラマンとして活動。
競馬をメインフィールドに雑誌、ポスター、カレンダー、DVD等に作品を発表。
フランス凱旋門賞をはじめ、海外大レースの撮影に積極的に参加。
最近は、各インターネット媒体コンテンツへの写真提供もこなし、更なる飛躍を目指している。

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