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2025年10月31日 (金)

 府中の2000mで争われる、天皇賞(秋)。
 長距離馬も中距離馬も、中にはマイラーも活躍する舞台で、ワタシの大好きなレースである。
 今回のコラムは、先週記した菊花賞「ビワハヤヒデ」の続きになる。

 4歳時(当時の表記)に最優秀4歳牡馬、年度代表馬のタイトルを獲得したビワハヤヒデ。
 古馬になってからは凄みが増して、4歳時の惜敗が噓のような活躍であった。

 古馬の初戦に選んだのが京都記念、ルーブルアクト以下を7馬身ちぎって勝利。
 天皇賞春もナリタタイシン以下を、1馬身3/4引き離して連勝。

天皇賞春優勝時©Shuhei-Okada.com

 宝塚記念でもアイルトンシンボリ以下を、5馬身突き放して最強馬となった。

宝塚記念優勝時©Shuhei-Okada.com

 秋を迎えたオールカマーでも、ライバルのウイニングチケットに1馬身3/4差をつけて完勝。
 天皇賞(秋)からジャパンカップ、そして有馬記念で前年のリベンジを目論む。
 さらには弟で二冠馬(天皇賞(秋)のレース時点)のナリタブライアンとの、兄弟対決へと夢は膨らむばかりであった。

 迎えた第110回天皇賞(秋)には13頭が出走。
 暗い曇りの中で行われたレースは、菊花賞を思い出させた。

 単勝オッズ1.5倍で迎えたビワハヤヒデ。
 2番人気のウイニングチケットが5倍。

天皇賞秋のパドックでのビワハヤヒデ©Shuhei-Okada.com
返し馬のビワハヤヒデ©Shuhei-Okada.com

 3番人気のネーハイシーザーが8.6倍と、一頭抜けた人気を背負った。

 スタートしてハナを奪うメルシーステージ、ネーハイシーザーは2番手につける。
 ビワハヤヒデは好位の4番手を追走、その直後にウイニングチケットが控える。

 4コーナーでは3番手まで上がり、スパートのタイミングを計るビワハヤヒデ。
 最後の直線で内に進路を取ったネーハイシーザー、外に進路を選ぶもいつものような伸びを見せないビワハヤヒデ。
 ウイニングチケットも馬群でもがいている。

©Shuhei-Okada.com

 残り100mで後続を突き放したネーハイシーザーが、先頭でゴール板を駆け抜けた。

©Shuhei-Okada.com
©Shuhei-Okada.com

 2着にセキテイリュウオー、3着にロイスアンドロイスが入った。ビワハヤヒデはまさかの5着、ウイニングチケットは8着でゴール。

 レース直後に、衝撃が走った。
 1コーナーを回った辺りで、ビワハヤヒデの岡部騎手が下馬している。

 馬運車に乗せられて退場したビワハヤヒデ。
 後に屈腱炎が判明し、このレースの5着が引退レースとなった。
 奇しくもウイニングチケットも、このレースで屈腱炎を発症しており現役最後のレースとなった。

 天皇賞(秋)でG1初制覇となったネーハイシーザー。
 1800m・2000mという中距離で圧倒的な強さをみせた。

©Shuhei-Okada.com
©Shuhei-Okada.com

 前走の毎日王冠で自身が持つ日本レコードを更新して挑んだ一戦。
 堂々の走りを見せて、G1ウイナーの仲間入りを果たした。

©Shuhei-Okada.com
©Shuhei-Okada.com

 タラレバは禁物だが、もしビワハヤヒデとウイニングチケットが故障を発生していなければ、レース結果は変わっていたかもしれない。
 故障が発生していなくても、ネーハイシーザーが先頭を駆け抜けていたかもしれない。

 第110回天皇賞(秋)は神のみぞ知る、そのようなレースとなった。

 この1週間後に開催された菊花賞で7馬身差をつけて完勝し、三冠馬に輝いたビワハヤヒデの弟・ナリタブライアン。
 両者無事ならば、有馬記念で夢の兄弟対決が実現するところだった。
 どちらが1番人気になるのか?結果はどうなったのか??
 これも神のみぞ知る結末になっていただろう。

岡田修平 (Shuhei Okada)

1969年 大阪府池田市生まれ
工芸高校写真工芸科、在学中に川本武司氏に師事。
1987年の卒業と同時に「JRA関西広報カメラマン」として撮影を始める。
また師匠の勧めで大阪芸術大学写真学科に進学、卒業後フリーカメラマンとして活動。
競馬をメインフィールドに雑誌、ポスター、カレンダー、DVD等に作品を発表。
フランス凱旋門賞をはじめ、海外大レースの撮影に積極的に参加。
最近は、各インターネット媒体コンテンツへの写真提供もこなし、更なる飛躍を目指している。

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