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2024年12月03日 (水)

写真の後は美味しく頂きました©大友和哉

 馬の眼はとても良いです。視野は350度あり、真後ろ以外すべて見えます。視力は人間でいうところの0.6~0.8程度と言われています。逆に近くの物に対して焦点は合いにくく、1秒程度かかると言われています。動体視力はとても良く外敵の動きをいち早く発見する為、発達したと考えられています。また色は黄色が一番見えやすく青や緑は良く見えますが、赤色は見えづらいようです。 

 彼らは早い動き、見えない所の動きをとても警戒します。前回もお話した通り、彼らはとても警戒心が強いです。言い方を変えれば臆病であると言えるでしょう。私たちはそんな彼らの背に乗ります。お気づきでしょうか?彼らには乗っている私たちが見えません。乗られる事自体、実は彼らにとってはとても怖い事でしょう。しかし、時間をかけて馴致していく事によって、彼らは乗られる事をストレスなく受け入れる様になっていきます。本当に人間に好意的な知能の発達した動物だと思います。

 その中でも競馬で活躍するサラブレッドは少しでも速く走る目的で改良をされている品種であるため闘争心が強く、敏感で警戒心も強い傾向にあります。彼らに騎乗するための馴致は1歳の頃から始まります。性格や育ってきた環境によってかなり差はありますが、初めは馬具を持って近づくだけで逃げて行く事が多いです。 

 体に触れる、馬具に慣れる、人と一緒に歩ける、合図や声に反応して走ったり止まったりできる等、少しずつ出来るようになっていきます。特に馬具の中でも腹帯を締める事はどんな馬でも初めは嫌がります。初めからギュッと締めて放してやれば、ロデオ大会の様に暴れさせる事は容易い事です。その様な馬を乗りこなす事が美徳であり、一番の調教の早道とされた時代もあった様ですが、現代では彼らのサインを無視して無理矢理に馬具を付けたり、無理矢理に乗ったりする事は後の彼らの人生においてトラウマを残すことになり兼ねないのでやるべきではないというのが主流となっています。

無防備に寝ています。若い子は良く寝ます©大友和哉
フレーメンの様子©大友和哉

 しかし、思ったように慣れてくれない馬も中にはいます。レースに出走するようになって2才、3才と年を重ねても乗られる事がまだ怖く、乗り手の少しの不注意でパニックになって振り落とそうとしてくる奴もいます。本当に彼らは色々な行動を仕掛けてきます。その原因がどこにあるのか、何故なのか?をわかってあげられる。わからなくとも考えてあげられるようにこれからも気を付けて行きたいです。

大友和哉

1986年生まれ
日本大学生物資源科学部獣医学科卒業後現在まで美浦近郊の育成牧場にて、獣医師兼ライダーとして競走馬の育成を主な業務として行いながら、日本大学馬術部のコーチとしても15年程務めている。現在全日本学生馬術大会13連覇中。
同時に馬術競技では総合競技を中心に積極的に参加し、主な成績は全日本学生馬術大会総合競技優勝、全日本総合馬術大会選手権競技5位、東京オリンピックテストイベント出場。
最近は競走馬のリトレーニングにも力を入れており、2023RRCファイナル総合馬術で3位入賞。

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