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 「あなたにとって過去一番、衝撃だったレースは何ですか?」

 オグリキャップという人もいるだろうし、ディープインパクトという人もいるだろう。アーモンドアイやイクイノックスに衝撃を受けて競馬を続けている若いファンもいるのでは。非常にありがたい。

 それらを見てきた上で筆者が挙げたいのはライデンリーダーである。95年4歳牝馬特別(現フィリーズレビュー)だ。この1位はこの30年、決して揺るがない。恐らく自分が世を去るまで1位のままだろう。

95年4歳牝馬特別を制したライデンリーダーと安藤勝己騎手

 自分にとって不動のトップである理由は2つある。

 まず「本当に強いのかどうか分からない馬だったこと」

 引退戦の有馬記念で劇的復活したオグリキャップにしても、当時は調子を落としていたとはいえ、“基本的には強い”ということは全員が了解済みだ。

 しかし、ライデンリーダーはそうではなかった。笠松競馬から10戦10勝での参戦。とはいえ、これが初めての芝、それもGⅡ戦でどれだけ通用するのか、全くの未知だった。計る物差しがないのである。

 もうひとつは「勝ち方が破天荒だったこと」

 レースぶりについては後述するが、ムチャクチャな走りで勝ち切ってしまった。レース直後はウインズ後楽園のモニターの前から動けなかった。

笠松競馬場で安藤勝己騎手を背に調教するライデンリーダー。後ろは名鉄名古屋線が木曽川を渡る橋梁©スポーツニッポン新聞社

 現実をのみ込むのに時間が掛かったのだ。笠松から来た謎の馬(失礼!)が考えられないようなレースぶりで圧勝した。これをどう受け止めればいいのか。脳が停止した状態だった。

 オグリキャップやトウカイテイオーが復活しても脳は停止しない。“以前は強かった”という大前提があるからだ。ライデンリーダーはそうではない。謎の馬(またまた失礼)なのだ。

 興奮してしまったので、ここらでレースぶりをプレーバック。ライデンリーダーは2番人気だった。1枠2番からまずまずのスタートを切った。

 だが序盤、全く流れについていけないのである。押っつけ通し。それでもジリジリと位置を下げ8番手。やはりダメか。筆者はこの時点で勝ち目はないとみて、ライデンリーダーから目を切った。

 ところがである。直線で外へと持ち出されたライデンリーダー。1頭だけ全く違う競技をしているような、もの凄い脚で突っ込んできた。

 もし、このレースを振り返るのであれば、関西テレビの映像で見てほしい。「おおっと来た来た来た来た。外からライデンリーダー来たぞ来たぞ来たぞ」。名物アナ・杉本清氏の名調子が響き渡る。

 だが、カメラは内の3頭をのんきに捉えていた。仕方ない。ライデンリーダーのパフォーマンスはプロの仕事をも狂わせる。

 直後、杉本アナは絶句した。「ライデンリーダー先頭に立つ勢いだ。抜けたーっ!ライデン!(2秒半空白)これは強い。恐れ入ったーっ!」

 レース中の2秒半無言は相当に長く感じる。その間、マイクは京都競馬場の場内のざわめきを拾っていた。スワンもびっくりの大歓声だった。豊富なキャリアを誇る語り部すら絶句する衝撃と現場の興奮。両方を全国に伝えた2秒半だった。

 前哨戦を快勝したライデンリーダーだったが、桜花賞は4着、オークスは13着に終わった。その後も何度かJRAに参戦したが白星を手にすることはできなかった。

 だが、筆者は感謝している。後にも先にもこれ1回の“脳停止”をプレゼントしてくれた。これこそ競馬観戦における最高のだいご味なのかもしれない。それを味わわせてくれたのだ。

 安藤勝己騎手はライデンリーダーによって、JRAの競馬を強く意識することとなり、のちの移籍につなげた。ライデンリーダーがいなければ、ダイワスカーレットやキングカメハメハでの名コンビはなかったのかもしれない。

 あの頃、アンカツさんのいない競馬は考えられなかった。その意味でもライデンリーダーには深く感謝しなければいけない。

鈴木正 (Tadashi Suzuki)

1969年(昭44)生まれ、東京都出身。93年スポニチ入社。96年から中央競馬担当。テイエムオペラオー、ディープインパクトなどの番記者を務める。BSイレブン競馬中継解説者。

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