夏競馬がすでにスタートしている。北海道では函館競馬が真っ盛りだ。
このサイトを見ている皆さんは函館を訪れたことはあるのだろうか。ない方は何とかして今すぐに日程を捻出し、函館行きを検討してもらいたい。それほど、函館の街には魅力がある。競馬関係者は全員、うなずくことだろう。
まず、当然ながら海鮮がうまい。名物であるイカのうまさは言葉では伝えきれない。筆者のお薦めは駅前の市場でなく、函館駅前から市電で数駅、五稜郭公園方面に行ったところにある「中島廉売」だ。
ここは主に地元の方が買いに訪れる場外。最近は旅行者もネットを見て研究しているから、以前より旅行者も増えたかもしれない。その場で食べさせてくれる店もあり、「ご飯を持参したら何杯でもいけるな」と考えたこともあるが、さすがに実行したことはない。
街のガイドばかりしても何なので競馬の話も。函館町歩きのノウハウを筆者に教えてくれたのは、今は亡き伊藤雄二元調教師だった。
函館を愛し、しゃれた家まで建ててしまった、まさに函館のドン。「雄先生」に連れて行ってもらった店はどこも驚くほどうまかった。新しくオープンした店もいち早くチェックするなど、そのアンテナの鋭さはタウンガイド誌顔負け。先生とジンギスカン鍋を囲みながら、ファインモーションやエアグルーヴの話を聞いたことが昨日のように思い出される。
伊藤雄二さんの話が出たところで、「伊藤雄二伝説」を1つ披露しておこう。
函館開催が終わり、札幌競馬が始まっても、函館競馬場の馬房は引き続き在厩が可能。いわゆるトレセン状態の「裏函」となる。
伊藤雄二厩舎も札幌と函館に馬房を確保して管理馬を分散させた。ウッドチップコースで調教したい馬や札幌へのレース前の輸送が苦にならない馬は函館に置いていた。追い切りは、ともに水曜。さて、伊藤雄二師は札幌と函館のどちらで追い切りをチェックするか。答えは「両方」だ。
まず、午前5時半の馬場開場後の追い切りは札幌でチェックする。時計を出した馬の、上がりの様子を見届けると、おもむろに札幌郊外の丘珠空港へと移動して函館行きの飛行機に乗る。所要時間40分ほどで函館に到着。空港から競馬場へは車で15分ほど。何食わぬ顔で調教師席に現れ、後半の時間帯に組んでいた馬たちの追い切りを見届けるのだ。
まさに神出鬼没。「飛行機の移動は全く苦にならんのですよ」が、雄先生の口癖だったが、なかなかできることではない。厩舎が好成績を上げるのは、しっかりと理由があるのだと伊藤雄二師から学んだ。