僕には仕事以外のライフワークと言えるべき趣味とか行動が、平均的な人に比べるとかなりたくさんあると思う。
その中のひとつに、牧場猫、地域猫、島猫などの所に訪れて戯れたり写真を撮ったりするという趣味がある。
保護猫オンリーの方々に言わせたら「生ぬるい猫好き」なのだろうが、猫が好きなことには変わりはない。
僕が子供の頃、家で猫数匹と犬を飼っていたが、昭和の時代の猫は日中放し飼いが当たり前。ご飯の時間になると帰ってくる感じなので、今の地域猫(桜猫)みたいなものだったといえよう。
馬の仕事をしてからは、残念ながら社宅がペット禁止だったのと、嫁さんが動物の毛アレルギーなので飼えなかったが、猫がこの世で一番好きな生き物であるのは、生涯ずっと変わらない。
牧場猫の話からは少し逸れるが、僕の地域猫の一番推しだったのは、大分県深島の「サチ」。
島猫界隈ではスーパースターだった彼女に2023年の11月に会いに行った。大好きなアイドルに会えて至福の時間を過ごしたのだが、その翌月の12月にサチは原因不明の急死。
良くも悪くも地域猫は家猫と違い、地域外の人を含む多くの人達に可愛がられる。島外から来た僕等が、猫に良くない細菌などを持ってきたのが原因かもしれない。
サチの死を知った時は、動物としてはマチカネコイノボリ以来かもというくらい、号泣してしまった。



そんな僕が、夏の北海道出張の際の楽しみのひとつにしているのは「牧場猫探しの旅」だ。
牧場猫とは、もちろん牧場や厩舎で飼っている猫の事。
去勢して桜猫(耳を少し切って目印にする)として飼っている場合もあるが、子供を産ませて他の牧場に子猫を分けたりもしている。
牛や馬の牧場や厩舎で猫を飼うのが多いのは、飼料などを食べに来るネズミ撃退の意味からだったらしいが、ただ単に牧場のマスコットとして飼っている雰囲気もある。
スマホはもちろん無く、カメラすら持ち歩かなかった時代、自分の厩舎ゆかりの牧場や、友人の実家の牧場などに遊びに行った時に、たくさんの牧場猫にまみれて遊んだ。その時写真撮っていたらなぁ…と残念でならない。
特に梅田智之厩舎の同僚だった、鹿戸清史調教助手のお父さん(鹿戸幸治調教師)の弟さんがやっている鹿戸牧場(門別)に遊びに行った時、たくさんの子猫がいた。
猫の中でも特に子猫の可愛さは格別。その中にまみれて遊んだ至福の時間が忘れられない。
残念ながら、その子猫達の写真はないが、大きくなって元気にしている写真をいただいた。



そして、何と言っても牧場猫の魅力を僕に教えてくれたのは、元ノーザンファームの厩舎長で現在は馬主さんのエージェントである中村哲人さんだ。
中村さんとはFacebookで交流ができて、その後札幌でご飯に行くなどし友人になった。
彼がノーザンファーム時代、各厩舎で猫が飼われていたらしく(今も)、その猫たちの交流や厩舎従業員たちの猫可愛がりの話をたくさん聞かせてもらった。
当時、中村さんの厩舎のアイドルだったのは「柚子」。写真を見たらその可愛さに、「次、北海道出張があれば絶対会いに行くぞ!」と心に決めていた。




柚子は、野生動物に襲われて怪我したり色々あったが、僕が北海道出張に行く前に、原因不明の病気で亡くなってしまった。
柚子の後釜として中村さんの厩舎にやってきたのは、生まれたばかりの黒白の猫。
柚子にあやかり同じ柑橘系の「カボス」という名前が付けられた。


そして2018年8月15日、お盆ということもあり、久しぶりにノーザンファームを訪れてエアグルーヴのお墓参りをさせていただいた。
その帰りに中村さんに厩舎を案内してもらい、1歳になったカボスに会わせてもらった。
柚子に会えなかった分、めちゃめちゃ愛おしかったのを今でも覚えている。




だが、そんなカボスもこの後、すぐ死んでしまった。突然死というやつだ。
地域猫や島猫もだが、牧場で放し飼いしている猫たちは、野生動物との接触や外部からの色々な菌などで急死してしまう事も多い。
やはり猫というものは、外に出さない家猫として飼うのが一番長生きなのだと、つくづく思った。
僕が「猫使い」と崇めている中村さんは、厩舎の現場は離れたが、今は馬主さんのエージェントとして全国を飛び回っている。
そんな猫マスターの中村さんは現在、自分のマンションで1匹の猫と暮らしている。
名前はもののけ姫から取った、ハク。

もちろん、ハクも柚子やカボスと同じ、ノーザンファームの牧場猫たちの流れをくむ血統なのは言うまでもない。
つづく