今週末は早くも秋のG1シリーズがスタートする。
開幕戦は秋のスプリント王決定戦のスプリンターズステークス(芝1200m G1)だ。
今回は1996年12月15日に行われた第30回スプリンターズステークスの話をしようと思う。
この年から中京競馬場の1200mのG1レースへと昇格し5月中旬に施行されることとなった高松宮杯(現・高松宮記念)。三冠馬ナリタブライアンの参戦に大いに盛り上がったレースを制したのが田原成貴騎乗のフラワーパークで、故障によるデビュー遅れから7か月余りでG1馬へと駆け上っていった。
安田記念(9着)の後に休養に入り、秋の初戦で出走したCBC賞ではライバルのエイシンワシントンの2着になって、12月のG1のスプリンターズステークスを迎えた。
当時は暮れの有馬記念の前の週に行われていたスプリンターズステークス。単勝2.3倍で自身初のG1レースで1番人気に支持されたフラワーパーク。ライバルのエイシンワシントンも3番人気で出走し快速自慢対決に注目が集まった。
スタートから果敢に先手を取り逃げるエイシンワシントン。フラワーパークは2番手追走でレースが流れ、勝負所の中山競馬場の坂の地点で並びかけると残り150mをピッタリと並走し、最後はそのまま二頭が並んでゴール!
3着馬のシンコウキングを5馬身突き放す、まさしく二頭の死闘であった。
ほぼ並んでのゴールにどちらが勝ったのか分からなかったが、勢いでは外のフラワーパークが優勢かな?と思っていたが、結果は長い写真判定待ちとなった。
12分間の長い写真判定の結果、外のフラワーパークが約1cm出ており史上初の同一年1200mG1レース連覇を飾り春秋スプリント制覇となった。レース後の口取り撮影では心なしか誇らしげに見えた。
当時、栗東トレセンを毎週取材しておりフラワーパークの東厩務員とはトウカイテイオーからの付き合い、エイシンワシントンの高橋厩務員とは厩務員チームとカメラマンチームの草野球での交流(一緒に練習したり試合したり)があり共に親しかったので、どちらにも勝って欲しいのが本音だった。
後日、フラワーパークに騎乗していた田原成貴騎手と藤田伸二騎手・四位洋文騎手との対談撮影時に田原成貴騎手はあのゴール前は奥の手を使って勝ったと話しており「きつつき戦法」を使ったと語っていた。その話に若手騎手の二人は感心しきりだったことを覚えている。
カメラマン目線では撮影時はもちろん、今でもレース動画を見ても奥の手が分からないが、騎手からすれば凄い細かなアクションが1cm差を生んだのかもしれないと思うと、騎手の僅かなバランス感覚や体幹の強さなど奥が深いと感じたものだ。
レース時期の見直しなどによって、3月末に高松宮記念、9月末にスプリンターズステークスが行われるようになって今に至っている。今年の高松宮記念を制したマッドクールも出走予定で昨年このレース2着の雪辱を果たそうと、同一年1200mG1連覇を目指す。
今年も快速自慢によるG1レースのスプリンターズステークス、どんなドラマが生まれるのか熱いレースに期待し、ゴールの瞬間をバッチリと捉えたいと思う。