トウカイテイオーのファンだった小学館の編集者Tさん。
『競馬の達人』1997年1月号に掲載されたコーナー、96総決算「歳末超特大プレゼント」として掲載された「ターフカメラマン自信の1枚」に載った写真を見て、


「この写真を撮ったカメラマンを紹介して欲しい」との依頼で、栗東トレセンでの挨拶へとつながった。
『魅惑のダート』連載が決まり、トレセン見学を含め厩舎の雰囲気を実際に見るための栗東トレセン訪問であった。
ワタシも競馬雑誌の撮影でトレセンに居たので、その機会で面会となった。
Tさんにお会いして、色々と話すことが出来た。
「トウカイテイオーの写真を色々と見て来たが、続きを見たくなる写真を初めて見た!」と言っていただけた。
「この人の撮るトウカイテイオーをもっともっと見てみたい!」
そう思えるほどに、電流が走ったかのような写真だったと。
そういわれてみると、自分にもそういうシーンは確かにあった。
中学生時代に毎週見ていた漫画、『ドラゴンボール』や『北斗の拳』を読んで、すぐに続きが見たくなったものだ。
また、お気に入りの歌手のアルバムを聴いても「他の曲も聴いてみたい」、美味しいご飯屋さんでは「他のメニューも食べてみたい」と思う。
「良い!」と思ってもらえると、続きが気になるもんだなとこの時に教えられた。
自分もプロカメラマンとして活動しているのだから、もっと他の写真を!もっと続きを見たくなるような写真を日々撮っていけば、どんどん仕事を任されるようなカメラマンになれるだろうと。
この時の「続きが見たくなる写真」という言葉を重く受け止めて、今もそういったファン目線を持ちながらも、自分のアングルを大事にするよう心掛けている。
プロカメラマンとしての考え方に幅が広がった一言をいただいた、と今でも思っている。
残念ながら、このきっかけを与えてくれた松本さんは、漫画の連載終了後すぐに病気のため急逝された。
昨年9月に記した「中津競馬場」でも書いたが、この当時は地方競馬場が疲弊していた。
松本さんと一緒に訪れた競馬場も、かなりの数が閉鎖されていった……
今のような馬券のネット発売があれば、継続していた競馬場も数か所あったと思われる。
地方競馬を愛していた松本さんも、少しは安心したことだろう。
Tさんとの仕事も、スペリオール誌内での対談撮影。
中高生時代に夢中になって見ていた『北斗の拳』の原作者・武論尊氏を撮影し、大興奮した。

武豊騎手原案の『ダービージョッキー』(小学館文庫)で一緒に仕事したり…と、競馬カメラマンと編集者としての実績も残した。

武豊騎手が原案の漫画なので、過去にコンビを組んだ名馬達とのコラボレーションとなっている。
またお酒が好きなTさんとの交流は今なお続いており、コロナ時以外は年2回ほど会って食事を共にしている。
今年の日本ダービー終わりにも、祝勝会のはずが反省会という名の飲み会をし、近況報告をした。
知り合って30年近い関係となったが、Tさんに会うと「続きが見たい!」と思ってもらえるような写真を撮り続けているか、つい自問自答してしまう。