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2024年09月18日 (木)

 クロスカントリー終了時団体3位まで浮上した日本チームでしたが、インスペクションにおけるトラブルでまさかの団体5位まで落ちてしまいました。2回目のインスペクションはクロスカントリーの終わった翌朝に行われます。クロスカントリーで全力を尽くして走って来た馬を翌朝良いコンディションで迎えさせる事は実は並大抵の事ではありません。クロスカントリー終了後から選手はもちろんグルームやチーム獣医など皆で馬体のケアに当たります。元々何処かに問題を抱えた馬であれば勿論ですが、健康な十分トレーニングされた馬であっても5000ⅿを超えるコースを走った後、何もしなくても次の日に元気一杯にしている馬はいないでしょう。インスペクションは目立つことのない項目ですが陰では沢山の人の努力がある事を想像してもらえればなと思います。

総合馬術代表チーム集合写真 左から根岸監督、大岩、戸本、田中北島選手、小川、土屋コーチ

 団体5位まで落ちてしまった日本チームですが、そこからの集中力が凄かったです。障害飛越は3選手とも素晴らしい気持ちの入った走行で障害減点0でゴールしました。団体1位のイギリスチームでも2落下、2位のフランスチームも4落下で日本チーム以外で障害減点0で来たチームはありませんでした。決して簡単なコースではなかったと思います。また前述の通り、クロスカントリーを走った疲労のある中での競技になりますので、障害減点0という結果は本当に素晴らしかったです。結果3位、4位だったスイス、ベルギーチームを抜いて銅メダル獲得となりました。

 とても失礼ですが、正直私も障害飛越が始まる前、メダルは無理かなと思ってしまいました。しかし障害飛越が始まるとテレビから目が離せなくなりました。前日にクロスカントリーを走って来た馬達は間違いなく疲弊しています。その証拠に馬術先進国と言われる欧米選手も次々と落下していきました。その中で日本選手の気迫の籠った表情で、減点なくゴールする姿は素晴らしかったです。特に彼らの表情や「絶対落とさないぞ」という気迫は、絶対馬にも伝わっていたと思います。馬術を知らない人でも見て頂ければお判りになると思います。それほどにカッコ良かったです。またそれは日本人の持つ才能の様にも感じます。高校野球や箱根駅伝を見て感動しない日本人は少ないはずです。「一生懸命はカッコいい」是非皆さんに伝えたいです。

 今回の活躍により、メディア等では普段とは比較にならない程取り上げられ、馬術競技の認知度も高まった事と思います。これを機に興味を持ってくれる方が増えて馬術競技がもっと盛り上がってくれると確信しています。最後に、これからも彼らが活躍して欲しいと思うと共に、彼らのような選手を目指す人が沢山表れてくれたらいいなと思います。 

大友和哉

1986年生まれ
日本大学生物資源科学部獣医学科卒業後現在まで美浦近郊の育成牧場にて、獣医師兼ライダーとして競走馬の育成を主な業務として行いながら、日本大学馬術部のコーチとしても15年程務めている。現在全日本学生馬術大会13連覇中。
同時に馬術競技では総合競技を中心に積極的に参加し、主な成績は全日本学生馬術大会総合競技優勝、全日本総合馬術大会選手権競技5位、東京オリンピックテストイベント出場。
最近は競走馬のリトレーニングにも力を入れており、2023RRCファイナル総合馬術で3位入賞。

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