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2025年01月29日 (水)

 鞍は皆さんも知っている通り、馬に乗る時に人が上手に乗れるようにする為に、馬の背中に乗せる革などで出来た道具です。人は馬に乗る時、鞍の上に座り、鞍から出たつり革のような鐙(あぶみ)という物に足を入れてバランスを取ります。

 書きながら考えると「かなり不安定な乗り物だなあ」と改めて思ってしまいますが、乗っているとだんだんそう思わなくなってくるので不思議です。鞍が無ければ馬の背中は座ると結構痛いですし、振動も直に伝わってくるのでとても大変です。

 おそらく人だけでなく馬の方も痛いだろうし、不快だと思います。現在の鞍はとても精巧に作られており、人にも馬にも優しい作りになっています。

 一言に鞍と言っても、求められる乗り方によって鞍はあらゆる姿になります。競馬のレースで使う鞍は、一番軽ければ約500ℊ程しかありません。一方、馬場馬術競技で使う鞍は大きく、鞍だけでも約9㎏はあります。またウエスタンで使う鞍は約12㎏と様々な形があります。今回は代表的な馬場鞍、障害鞍、レース鞍について見ていきます。

馬場鞍©大友和哉
馬場鞍 後橋©大友和哉

 馬場鞍は鞍にお尻がついている事の多い馬場馬術の際に用いられます。お尻が鞍につきやすい様にシートが深く、鞍の後ろ部分の後橋(こうきょう)が高く設計されています。また深く座るため鐙も長くなるのであおり革と呼ばれる横部分の革が縦に長いのも特徴です。

障害鞍©大友和哉
障害鞍 後橋©大友和哉

障害鞍は障害馬術の際に用いられます。障害を飛越する際の姿勢が取りやすい様に設計された鞍で、馬場鞍に比べシートのカーブが浅く、後橋もお尻を上げた時ぶつからないように低くなっています。あおり革もお尻を上げるため短く、膝が曲がる分、前方へ出た形となっています。

レース鞍©大友和哉

レース鞍は競馬の際に用いられる為、とても軽い必要があります。素材も革ではなく丈夫で軽い合成素材の物が主流です。鞍に座る事は想定されていないので、シートも極力薄く軽くなっています。

競馬の姿勢を想像するとわかる通り、人が鞍に接地するのは膝より下だけですので、あおり革もほぼ必要なく本当に小さいものです。写真の鞍はまだ大きめの物で1㎏位ですが、もっと小さい物まであるようです。

この様に鞍にはたくさんの種類があります。紹介できたのはほんの一部で、まだまだたくさんの形があります。馬の背中に合わせたオーダーメイドの鞍と言うのもあります。自分で乗られる機会、またはご覧になる機会があれば、鞍を是非見てみて下さい。乗馬や競馬の見え方が少し変わるかもしれません。

大友和哉

1986年生まれ
日本大学生物資源科学部獣医学科卒業後現在まで美浦近郊の育成牧場にて、獣医師兼ライダーとして競走馬の育成を主な業務として行いながら、日本大学馬術部のコーチとしても15年程務めている。現在全日本学生馬術大会13連覇中。
同時に馬術競技では総合競技を中心に積極的に参加し、主な成績は全日本学生馬術大会総合競技優勝、全日本総合馬術大会選手権競技5位、東京オリンピックテストイベント出場。
最近は競走馬のリトレーニングにも力を入れており、2023RRCファイナル総合馬術で3位入賞。

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