UMATO

2026年01月08日 (木)

 すでに26年の競馬が始まったが、昨年の有馬記念を振り返っておきたい。やや時間が経過してしまったことは否めないが、それでも当欄に残しておくべき、いい競馬だった。

 筆者が勝負のポイントだと感じたのは上位人気3頭(1番人気レガレイラ、2番人気ダノンデサイル、3番人気ミュージアムマイル)の並びである。

 スタート後、次第にバラけていく中、ミュージアムマイルのクリスチャン・デムーロ騎手はスムーズにダノンデサイルの後ろにつけた。そして、その後ろにレガレイラ。

有馬記念を制し、ミュージアムマイル(中央)鞍上のC・デムーロはガッツポーズ。その左は3着ダノンデサイル。さらに左に4着レガレイラ©スポーツニッポン新聞社

 パトロールビデオで見ると分かりやすいのだが、向正面できれいに縦に並んだこの3頭は、まるで競輪の“ライン”のような雰囲気を漂わせていた。

 最もいい位置だと思ったのはミュージアムマイルである。12月8日の当コラムでも記したが、「強い馬の後ろ」に付くことは道中のストレスが少なく、勝利への近道なのである。

 ダノンデサイルに騎乗した戸崎圭太騎手は当然、道中でおかしな動きはしない。ペース判断も的確なので、安心してマークすることができる。C・デムーロ騎手、さすがの策だった。

 3頭の中で最も前にいたダノンデサイル。これも正解だろう。問答無用の瞬発力があるタイプではなく、むしろスタミナを問われる削り合いになった方がいい馬。人気3頭の中で最も前に位置し、先に動いて粘りを引き出した方がいい。

 割を食ったのはレガレイラだ。恐らくクリストフ・ルメール騎手はダノンデサイルの後ろが欲しかっただろう。ただ、ミュージアムマイルがあまりにきれいにダノンデサイルの後ろに収まってしまったので早々と諦めざるを得なかった。ミュージアムマイルの後ろという次善の策は取れたが、1手遅れることを覚悟する位置となってしまった。

 4角手前。1手遅れる分をカバーすべく、レガレイラは動いてダノンデサイルの直後を狙いにいった。ダノンデサイルのすぐ外に出せればベストだったが、その位置にはミュージアムマイルがいた。ダノンデサイルとミュージアムマイルの間を割れれば勝つ可能性もあったが、そこはC・デムーロ騎手。スペースを開けるようなことはなく、レガレイラは内に馬を向けるしかなかった。

 スペースを探しながら動くのでは、なかなかトップスピードには達しない。結局、人気3頭の中では最後尾となって4着止まり。外からミュージアムマイルが差し切って勝ち、ダノンデサイルも伸びてはいたが、前にいたコスモキュランダをかわせず3着だった。

 枠順の妙、スタートダッシュの妙。そこに各騎手の細やかでハイレベルな技術が加わって、結果、こういう着順になった。パトロールビデオを何度も見直す限り、同じメンバーでも異なる枠で戦えば、また違った結果が出るはずだと感じた。

 レース後、レガレイラのルメール騎手と木村哲也調教師は異口同音に「馬場が緩くて脚を取られ、素早い反応ができなかった」と語った。

 中山では今開催、土日に雨が降る日が多く、芝は傷みが進んでおり、4角では泥がはね上がるシーンも多く見られた。良馬場といってもパンパンの良ではなく、過去に2度、やや重馬場で走って、ともに馬券圏内を外したレガレイラにとっては厳しかった。長いスパンで見た“天候”も彼女に味方してくれなかったといえる。

 皆さんもグランプリのパトロールビデオで、これら上位人気3頭の動きだけを目を凝らして見てほしい。きっと、普通の中継で見る有馬記念とは別の、バチバチの3頭の勝負が見えてくるはずだ。

鈴木正 (Tadashi Suzuki)

1969年(昭44)生まれ、東京都出身。93年スポニチ入社。96年から中央競馬担当。テイエムオペラオー、ディープインパクトなどの番記者を務める。BSイレブン競馬中継解説者。

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