2024年9月4日、40年間毎年のように出張していた僕の北海道シリーズがとうとう終了した。怪我や病気などで休んでいる人の厩舎で定年後にヘルパー(嘱託バイト)として仕事が来る可能性はあるが、それはかなりレアなケースなのでまず無いと考えていい。
僕の北海道の担当馬勝利数は函館に比べて札幌のほうが多く、ゆうに3~4倍の差がある。勝ったり上位入線したレースのグレードも高い。
今回はそんな思い出深い札幌競馬場を紹介したいと思う。
札幌競馬場は札幌市内の中心の大通公園から直線距離で北に3~4kmほどの所にあり、都会の中にある競馬場と言ってもいいだろう。
調教スタンドから3コーナーの向こうあたりに札幌駅前からすすきの方面にあるビル群が見える。
「眠らない街」と言われる歓楽街すすきの。ほんの2時間くらい前まで飲んでいたその場所を見ながら二日酔い気味で担当馬の調教を何度見たことか…。
そしてボーッとしていたら「田中!馬上がって来てるぞ!」と言われて慌てて階段を駆け下りた。スタンドの椅子で完全に寝てしまっている人もいた。
そんな昔を思い出しながら調教をスタンドから見ていたが、歳を取った今はお酒もほどほどで寝るのも早いので、以前と違い朝はシャキッとして自分の馬の姿はしっかり見えていた。
札幌競馬場は厩舎地区が西と東の2つに分かれていて、西厩舎地区は道路を橋で超えた所にある。
僕は前厩舎時代から今回まで札幌では満遍なく色々なブロックの厩舎に入った。 最後の札幌出張となった今回は東門からほど近い東地区のI(アイ)ブロック。函館では寮に宿泊したが、札幌にある厩務員寮はその年の厩舎ブロックよってはかなり遠くなるので厩舎の両端にある部屋に宿泊する。
この東門に近い厩舎は僕にとって一番使い勝手がいい。馬の入れ替えなどで使う検疫厩舎が近いし、最寄り駅の桑園駅も歩いて15分ほどだ。天然温泉の銭湯「北のたまゆら」やイオンもほど近くとても便利な通用門といえよう。
朝の調教は自分達の厩舎地区周りをしばらく運動してから調教スタンドの裏手にある装鞍所まで行き、そこで騎手や助手を乗せて馬場へ向かう。
競馬開催日は、東厩舎方面からスタンドに行く一直線の道でレースに向かう馬とレースが終わって帰ってくる馬ですれ違う事が多い。
「どうやった?」「勝ちました!」「おめでとう!」「だめでした!」「お疲れ!」「今からか、頑張ってや!」と言った挨拶がすれ違いざま頻繁に交わされる。
調教の時この道は基本一方通行となり、馬場に行く方向は使われないので競馬の日だけの風物詩と言えよう。
栗東と美浦ではもちろん、同じ栗東の関係者でも顔は知ってるが名前は知らないといった人は多い。そんな人達とこうした交流があるのも夏の出張滞在競馬ならではのものだ。
つづく