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2024年09月19日 (金)

2000年 マイルチャンピオンシップ©スポーツニッポン新聞社

アグネスデジタル
Agnes Digital

牡、1997年5月15日生まれ
父Crafty Prospector
母Chancey Squaw(父Chief’s Crown)
馬主/渡辺孝男氏
調教師/白井寿昭
生産牧場/米・Catesby W. Clay & Peter J. Callahan
通算成績/32戦12勝

 投手と打者の両部門で活躍する大リーグ・ドジャース大谷翔平選手のおかげで「二刀流」という言葉が市民権を得た。しかし、今回の主役アグネスデジタルを表すには「二刀流」どころか「三刀流」、いや「四刀流」という言葉でも足りないかもしれない。

 芝、ダート、中央、地方、そして海外で計6つのGⅠレースを制覇した。また2歳から6歳まで5年間現役を続け、3歳から6歳まで4年連続でGⅠ勝ちを収めた。丈夫で長持ち、その上オールマイティーという異能のサラブレッドだ。

 米国生まれのアグネスデジタルは遅咲きで本格化するまでに時間がかかった。初めてGⅠタイトルを手にしたのは3歳11月のマイルチャンピオンシップ(京都競馬場、芝1600㍍)だった。初の重賞制覇が地方・川崎競馬場で行われた2歳時の全日本3歳優駿(当時、馬の年齢の数え方が今とは違っていた)だったように、ダート戦を中心に走っていた。マイルチャンピオンシップの直前も4戦連続してダート戦を戦っていた。このため芝GⅠのマイルチャンピオンシップでは18頭立ての13番人気とまったくの人気薄だった。

 しかしレースは圧巻だった。的場均騎手のゴーサインに合わせて、最後の直線で桁違いの末脚を爆発させ、1番人気のダイタクリーヴァを半馬身差でかわして、先頭でゴールした。勝ち時計の1分32秒6は従来の記録を0秒2更新するレースレコードだった。伏兵によるフロック勝ちとはいえない強い内容だった。

 4歳秋から5歳春はGⅠ4連勝という快進撃を見せた。01年10月には地方・盛岡競馬場でマイルチャンピオンシップ南部杯(ダート1600㍍)、同じ月には東京競馬場の天皇賞・秋(芝2000㍍)、12月には香港・シャティン競馬場の香港カップ(芝2000㍍)と勝ち続け、02年2月には東京競馬場のフェブラリーS(ダート1600㍍)でも勝利を飾った。最後のGⅠ勝利は6歳、03年6月の安田記念(東京競馬場、芝1600㍍)だった。4戦とも四位洋文騎手とのコンビだった。

2002年 フェブラリーステークス©スポーツニッポン新聞社

 アグネスデジタルのほかに、芝とダートの双方でJRAのGⅠを制した馬は4頭を数える。クロフネ、イーグルカフェ、アドマイヤドン、モズアスコットだ。けれどもアグネスデジタルのように地方、海外でもGⅠ勝利を挙げた馬は1頭もいない。

 種牡馬になったアグネスデジタルは自身と肩を並べるような大物を送り出すことはできなかったが、いかにもアグネスデジタル産駒らしい息子には恵まれた。それがヤマニンキングリーだった。芝の重賞・中日新聞杯と札幌記念を制した後、11年11月にダートの重賞シリウスS(阪神競馬場、ダート2000㍍)に出走し、見事に優勝した。父と同じように芝とダートの双方で重賞勝ちを収めることに成功した。それはヤマニンキングリーにとってデビュー29戦目で初のダート戦だった。

有吉正徳

1957年、福岡県出身。82年に東京中日スポーツで競馬取材をスタート。92年に朝日新聞に移籍後も中央競馬を中心に競馬を担当する。40年あまりの取材で三冠馬誕生の場面に6度立ち会った。著書に「2133日間のオグリキャップ」「第5コーナー~競馬トリビア集」

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