スペシャルウィーク
Special Week
牡、1995年5月2日生まれ
父サンデーサイレンス
母キャンペンガール
母父マルゼンスキー
馬主/臼田浩義氏
調教師/白井寿昭
生産牧場/日高大洋牧場
通算成績/17戦10勝
スペシャルウィークは生まれて間もなく母を亡くした。
母キャンペンガールは名門と呼ばれる牝系の出身だった。その血統をさかのぼると、1907年(明治40年)に英国から輸入された「小岩井系」に行き着く。小岩井とは岩手県にある小岩井農場のことだ。現在は乳業で有名だが、戦前はダービーで6勝するなど競走馬生産で国内トップクラスの成績を残した。名門の遺伝子を受け継ぐキャンペンガールだが、けがのためデビューできず、不出走のまま繁殖牝馬になった。スペシャルウィークを産み、亡くなった時は8歳だった。
母を亡くしたスペシャルウィークは乳母と牧場スタッフに育てられた。ばんえい競馬に出場しているのと同じ、体の大きな重種に分類される馬が乳母を務める。スペシャルウィークは激しい性格で知られる父サンデーサイレンスの産駒にしては従順でおとなしかった。それは幼いころから多くの人の手を借りて育てられたせいかもしれない。コンビを組む武豊騎手にこの点について質問したことがある。「人を信用している感じがします」というのが、彼の答えだった。逆境をプラスに変えた。
デビュー前のトレーニングに乗った時から武豊騎手はダービーを意識したという。期待通りにデビュー勝ちを果たしたが、2戦目はまさかのとりこぼしで2着。態勢を立て直してからは、きさらぎ賞、弥生賞と重賞を連勝してみせた。しかし断然の1番人気で臨んだ皐月賞は3着に終わった。
1987年にデビューした武豊騎手は新人記録を次々と塗り替える活躍でスタージョッキーとなった。その名声は競馬の世界にとどまらず、一般社会にも広がった。騎手生活12年目を迎えた武豊騎手に欠けていたものは「ダービージョッキー」の称号だった。その前年まで9度ダービーに出場し、2着と3着が1度ずつあるだけで、頂点に立つことはできなかった。天才ジョッキーに欠けていた称号を与えてくれたのがスペシャルウィークだった。
1998年6月7日、第65回日本ダービーが行われた。最後の直線、1番人気のスペシャルウィークは後続との差を広げていった。2馬身、3馬身。5馬身差をつけたところが栄光のゴールだった。その後5勝を上乗せすることになる武豊騎手のこれがダービー初優勝だった。
確かな末脚を武器にしたスペシャルウィークと長い直線を持つ東京競馬場は相性が抜群だった。4歳時の天皇賞(秋)は後方一気の追い込みを決め、当時の記録を0秒2更新するレース新記録で優勝。続くジャパンカップでも海外の強豪を向こうに回し、堂々の勝利を飾った。現役生活でGⅠ4勝を挙げたが、そのうち3勝を東京競馬場で手にした。
種牡馬になったスペシャルウィークはGⅠ6勝のブエナビスタや日米でオークスを制したシーザリオ、菊花賞馬トーホウジャッカル、ダート巧者のローマンレジェンド、ゴルトブリッツなどを送り出した。明治時代にさかのぼる伝統の母系と、名種牡馬サンデーサイレンスの遺伝子はこれからも後世に引き継がれていくだろう。