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2024年07月03日 (木)

2000年 宝塚記念©スポーツニッポン新聞社

テイエムオペラオー
T.M. Opera O

牡、1996年3月13日生まれ
父オペラハウス
母ワンスウエド(父Blushing Groom)
馬主/竹園正継氏
調教師/岩元市三
生産牧場/杵臼牧場
通算成績/26戦14勝

 2000年のテイエムオペラオーは無敵だった。この年8戦8勝。GⅠレース5勝、GⅡレース3勝の成績で、稼いだ賞金は10億3600万4千円に達した。これは中央競馬の年間獲得賞金記録として今も残り、10億円を超えた唯一の例だ。

 その勝利の特長は接戦だ。2着馬との着差を出走したレースの順に並べてみよう。

 京都記念  クビ
 阪神大賞典 2馬身半
 天皇賞・春 4分の3馬身
 宝塚記念  クビ
 京都大賞典 アタマ
 天皇賞・秋 2馬身半
 ジャパンC クビ
 有馬記念  ハナ

2000年 ジャパンカップ©スポーツニッポン新聞社

 2着馬と同タイムというレースが5度あった。阪神大賞典と天皇賞・秋で0秒4差をつけたのが最大の着差で、天皇賞・春は0秒1差だった。8戦合計しても2着とのタイム差は0秒9にしかならない。芝コースでは1秒=6馬身相当という計算をする。00年のテイエムオペラオーは8戦合計しても2着に6馬身差もつけられていないのだ。いかに勝負強かったのかがわかる。

 そんなテイエムオペラオーの運命を決めたのが1999年の毎日杯だった。デビュー3戦目で初勝利を飾ると、続く特別レースも快勝し、5戦目で初めて重賞レースに駒を進めた。14頭立ての3番人気に支持されたテイエムオペラオーは最後の直線で末脚を伸ばし、2着馬に4馬身差をつける完勝で重賞初制覇を果たした。引退するまでの芝のレース24戦でテイエムオペラオーがもっとも大きな着差で優勝したのが、この毎日杯だった。

 毎日杯の勝利によって、陣営は諦めかけていた皐月賞に追加登録を行った。追加登録制度のことを説明しなければならない。皐月賞、日本ダービー、菊花賞、桜花賞、オークスというクラシックレースでは、出走までに3回の特別登録をする必要がある。1回目は2歳10月、2回目が3歳1月、そして3回目がレースの2週間前になる。通常の手続きなら1回目1万円、2回目3万円、3回目36万円の計40万円が必要だ。しかし中には様々な理由で1回目、2回目の特別登録をやめるケースがある。テイエムオペラオーの場合は2歳の8月にデビューした後、骨折が判明し、復帰は翌年1月になった。4月に始まる三冠レースに間に合わないと考えられていた。追加登録制度は92年にスタートした。クラシックの1、2回目の特別登録がなくても、3回目に通常の5倍に当たる200万円の追加登録料を払えば、レースへの出走を認めるという新しい制度だった。

 テイエムオペラオーは200万円の追加登録料を払って、皐月賞に出走した。そして見事に優勝した。追加登録制度が始まって8年目。テイエムオペラオーは史上初めて追加登録でクラシック制覇を果たした競走馬になった。土俵際からの大逆転。テイエムオペラオーの勝負強さは00年の全勝だけでなく、競走生活の節目でも発揮された。

有吉正徳

1957年、福岡県出身。82年に東京中日スポーツで競馬取材をスタート。92年に朝日新聞に移籍後も中央競馬を中心に競馬を担当する。40年あまりの取材で三冠馬誕生の場面に6度立ち会った。著書に「2133日間のオグリキャップ」「第5コーナー~競馬トリビア集」

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