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2024年09月16日 (月)

 パリオリンピック総合馬術日本代表チームの活躍を皆さんはご覧になられたでしょうか?馬術競技では92年ぶり、団体としては初めてのメダル獲得となりました。テレビの前で応援した私も素晴らしい走行、そして素晴らしいドラマに感動し涙が出ました。本当におめでとうございます。

表彰式後の様子 馬上左から大岩、田中、戸本選手、地上北島選手

 「初老ジャパン」の愛称で呼ばれる代表チーム、平均年齢は42.6歳でした。今回の総合馬術に出場した選手65人の平均年齢は38.6歳で、最高齢は57歳でしたので、決して日本チームだけが年齢が高かった訳ではないです。また強豪国ほど年齢が高い傾向にあります。過去にはロンドンオリンピックにおいて「ジジの星」として有名になった法華津さんは馬場馬術競技に71歳で出場しました。

 この様に馬術競技は他の競技に比べ選手の競技生活が長く、選手の経験も成績に大きな影響を与えると言えるでしょう。今回のメンバーは大岩選手が5回目のオリンピック、戸本選手が2回目で前回個人4位、北島選手、田中選手が3回目と全員が経験豊富なメンバーで臨む事となりました。

 総合馬術は初日に馬場馬術、2日目にクロスカントリー、3日目に障害馬術と三種目を1頭の馬で減点を競い行う非常にタフな競技です。また団体は三人の減点の合計で争われます。初日の馬場馬術では、団体の減点が87.40の5位、個人でも大岩選手が減点28.50の8位での滑り出しとなりました。

 2日目のクロスカントリーは全長5149m、規定タイム9分2秒のコースで行われました。クロスカントリーは本当にタフな種目です。全体での分速は570m、時速約35㎞で約9分間走る訳です。もちろんその間に障害物を飛越しなければなりません。難しい障害物は速度も落とさなければいけないので規定時間内に帰ってくるためには、速い所で分速約800ⅿ、時速にすると約48㎞ものスピードで走らなければいけません。馬にも人にも体力が求められます。3選手とも素晴らしい走行で障害減点は0、北島選手だけタイム減点の6.4が付きましたが、団体でメダル圏内の3位まで浮上しました。その時点で4位スイスとの差は8.6点と落下2本分の差となっており、障害飛越の得意な人馬が多かったので本当に団体でのメダル獲得に近づいたように思いました。

 しかし、ドラマはまだ終わりませんでした。総合馬術では、馬場馬術の前の日と障害馬術の前に計2回、インスペクションと呼ばれる馬体検査があります。馬のケガや歩様の乱れ、疲労具合などが評価され、競技に参加できる状態であるかを審判団と獣医師によって審査されます。日本チームは北島選手のセカティンカ号が2回目の馬体検査をクリアすることが出来ず棄権した為、リザーブの田中選手と障害馬術は入れ替わる事となりました。この時点で減点20が加算されて団体の順位も5位まで下がってしまいました。


後編へ続く

大友和哉

1986年生まれ
日本大学生物資源科学部獣医学科卒業後現在まで美浦近郊の育成牧場にて、獣医師兼ライダーとして競走馬の育成を主な業務として行いながら、日本大学馬術部のコーチとしても15年程務めている。現在全日本学生馬術大会13連覇中。
同時に馬術競技では総合競技を中心に積極的に参加し、主な成績は全日本学生馬術大会総合競技優勝、全日本総合馬術大会選手権競技5位、東京オリンピックテストイベント出場。
最近は競走馬のリトレーニングにも力を入れており、2023RRCファイナル総合馬術で3位入賞。

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