今週から関東の舞台は中山へ。日曜メインは伝統の中山記念だ。
過去の優勝馬に名馬が何頭も名を連ねている舞台。筆者の印象に強く残るのは16年優勝馬ドゥラメンテだ。
言わずと知れた15年皐月賞、ダービー馬。この馬がデビューから皐月賞、ダービーを勝つまでに歩んだ道のりは、毎年、クラシックを予想していく上で非常に参考となるので、ここに記しておきたい。

ドゥラメンテは14年10月12日、東京芝1800メートルでデビュー。パドックでの馬っぷりは飛び抜けていたが、レースでは出遅れ。大外から上がり3F最速の脚を繰り出したが4分の3馬身差2着。直線半ばで手前が戻ったのが痛かった。
2戦目。ゲートはポコンという感じで出たが、初戦と比べればだいぶ改善されていた。初戦とは一転してインで我慢し、直線では内から3頭目を抜け出した。後続を引き離したが、それでも追うのをやめなかったムーア。レース中は最後まで気を抜かないことを教え込んだように見えた。ちなみに手前は、抜け出して1頭になったところで戻ってしまった。つまり「ゲートは改善」「馬群での対応を覚えた」「手前は課題」というレースぶりだった。
3戦目・セントポーリア賞。スタートはやや劣勢だったが致命的というほどではない。道中は6番手を進み、直線では馬なりのまま先頭をうかがう。地力の差は明らか。だがこの時、ドゥラメンテは外を見ながら集中し切れていない感じがあった。追い出すと真っすぐ前を向いたのだが、肝心の手前はまた戻ってしまった。5馬身差の圧勝だが課題は残った。「互角のスタートがやはり切れない」「勝負どころで集中できない」「依然として手前は課題」である。
4戦目・共同通信杯。初めて中1週で使ってきた。クラシックに向かうためには、そろそろ賞金を積み上げておかなければ、という狙いがあったと思われる。

スタートは盤石。だが、その後しばらくしてドゥラメンテは行きたがった。首を上げ、石橋脩騎手が懸命に制御。ようやく落ち着いたがポジションは下がった。それでも直線、残り250メートルで先頭。だが、200でまたしても手前が戻る。そこを勝ち馬に突かれた。リアルスティールにかわされて半馬身差2着。のちにドバイターフを勝った強豪に屈した形で、仕方のない面もあったが、陣営のショックは大きかったはずだ。「手前がやはり課題」「行きたがる面が出た」。クラシック近し、という中、ドゥラメンテはウイークポイントを2つも抱えることとなった。
皐月賞前の調教。筆者はドゥラメンテの映像に目がくぎ付けとなった。目を保護するアイシールドを着け、僚馬の後ろで我慢する調教に励んでいた。共同通信杯で行きたがった点の改善だろう。ドゥラメンテは特訓を冷静にこなしているように見えた。進化ありとみて皐月賞、筆者は◎を打った。
ゲートはほぼ互角。これが初騎乗となったミルコ・デムーロ騎手は行きたがった共同通信杯のイメージがあったのか、行く気を全く見せず、1コーナーは13番手で回った。
3角。ドゥラメンテはしっかりと折り合ったままインからジリジリと位置を上げた。アイシールドを着けての特訓が実を結んでいることは明らかだった。この動きが劇的なVを呼ぶ。
4角。ドゥラメンテは6頭分ほど、横に滑るように急激に外斜行。鞍上は制裁を受けることとなる。あれほど斜行するとは想像できなかったが、4角であの位置にいなければ、ドゥラメンテが勝つことはなかったと思われる。3角で位置を上げた成果だった。3角での上昇がなければ恐らく4角は14番手付近。前の馬たちをさばくので精いっぱいだっただろう。「アイシールド調教効果」のおかげだった。
そして直線。ドゥラメンテは一連のレースと異なり、手前を戻すことはなかった。初の右回りが功を奏したか、調教の成果か。走りやすい手前のままで最後まで走り、爆発的な決め手を繰り出して差し切った。
こうして不安点をあらかた解消して1冠を手にしたドゥラメンテ。ダービーも1番人気に応えて快勝した。
どうだろう。目標のレースに向けて課題を見つけ、調教によってそれを解消し、上のステージへと登っていく。ドゥラメンテは非常に分かりやすいモデルケースだった。トレセンの人々は日々、課題と向き合い格闘している。この馬の課題は何か、解消されたのか、まだなのか。そのあたりに気を配り、馬券的中につなげられたら、これは大きな喜びに違いない。