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 今週の中山メインは京成杯。といえば筆者が真っ先に思い出すのは02年、東京で行われた京成杯。ヤマニンセラフィムとローマンエンパイアが鼻面を並べてゴールし、1着同着。着順掲示板に「同」の文字が出るとスタンドはどよめいた。

 人気2頭の叩き合いだった。1番人気(単勝1.9倍)ローマンエンパイアは前走・さざんか賞で2着馬を5馬身突き放しての参戦。ここまで2戦2勝。父サクラローレル譲りの切れ味が武器だった。

02年京成杯。並んでゴールに飛び込み、同着となったローマンエンパイア(左)とヤマニンセラフィム©スポーツニッポン新聞社

 一方のヤマニンセラフィムは2番人気(単勝2.9倍)。こちらはエリカ賞を制し、同じく2戦2勝での東上だった。父はサンデーサイレンス、母は94年阪神3歳牝馬ステークス勝ちのヤマニンパラダイスという良血だ。

 2頭の戦い方は対照的だった。3、4角中間から動き出し、外へと進路を取った武幸四郎騎手(現調教師)のローマンエンパイア。

 一方、蛯名正義騎手(同)とヤマニンセラフィムはロスを減らすべくインで我慢。直線を向き、前も空いた。

 残り400メートルで先頭に立つヤマニンセラフィム。ローマンエンパイアも大外から長く脚を使う。やはり人気2頭の勝負。ローマンエンパイアに迫られ、もうひと踏ん張りするヤマニンセラフィム。「並んでゴールイン!」の実況が場内に響いた。

 真冬というのに検量室前は熱気に包まれていた。負けていると思ったか、ローマンエンパイアの武幸四郎騎手は馬を2着の枠場に入れた。「最後にかわしたかと思ったけど、やっぱり負けてるかな」。うつむきながら検量室に入った。

 ヤマニンセラフィムの蛯名騎手も勝利を確信できないでいた。「体勢は(自分の方が)有利だと思ったけど、(ゴールの瞬間は)向こうの方が頭が低かった。うーん…」

 写真判定は約10分。検量室内のホワイトボードに裁決委員が「同」と書き込むと、おおっという声が上がった。武幸四郎騎手は「いやー、日頃の行いが良かったかな」。蛯名騎手は「まあ、負けなくてよかったよ」と、それぞれにホッとした様子だった。

 同着の際の悲喜こもごもは、当事者にとってはドキドキものだろうが、見ている分には非常に面白い。

 10年オークス。サンテミリオンとアパパネ。蛯名正義、横山典弘の関東の名騎手2人が栄冠を分け合い、お立ち台にて笑顔で抱き合うシーンは今もファンの記憶に残る日本競馬史の名場面だ。

 22年のドバイターフも同着のドラマがあった。日本調教馬パンサラッサと英国のロードノースが鼻面を並べて入り、お立ち台で吉田豊騎手とデットーリ騎手がカップを一緒に掲げた。場内からは万雷の拍手が起こった。

 ただ、1着同着が発生すると、“裏”はバタバタとなる。口取りは2度行う必要がある。ただでさえ写真判定で時間を要したのに、タイムスケジュールが一気に苦しくなる。馬の首に掛ける優勝レイは口取りで使い回し、さらに、全く同じレイを後で製作し直す。賞状や賞品は全く同じものを双方に渡すという決まりになっているからだ。

 賞金は1、2着の賞金の合計を折半する形となる。そして払い戻しでいえば…面白い現象が起きていた。ヤマニンセラフィムの単勝配当は120円、ローマンエンパイアの単勝は110円。しかし、複勝はヤマニン、ローマンとも130円ついた。

 同着にホッとしたのもつかの間。「何だよー、複勝の方がついたのかよー」と膝から崩れ落ちたファンがいたかどうかは…定かではない。

鈴木正 (Tadashi Suzuki)

1969年(昭44)生まれ、東京都出身。93年スポニチ入社。96年から中央競馬担当。テイエムオペラオー、ディープインパクトなどの番記者を務める。BSイレブン競馬中継解説者。

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