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2024年12月07日 (日)

2020年 天皇賞・秋©スポーツニッポン新聞社

アーモンドアイ
Almond Eye

牝、2015年3月10日生まれ
父ロードカナロア
母フサイチパンドラ
母父サンデーサイレンス
馬主/シルクレーシング
調教師/国枝栄
生産牧場/ノーザンファーム
通算成績/15戦11勝

 新型コロナウイルスが猛威をふるった2020年、中央競馬は牝馬が大活躍した。その中心にいたのがアーモンドアイだ。

 19年暮れ、当初は香港カップへの遠征を計画していたが、出発直前に発熱したため出走を見合わせた。すぐに調教を再開し、目標を有馬記念に切り替えた。ところがレースでは、これまで見せたことがないほど気負ってしまった。そのためスタミナを温存することができず、末脚不発。全競走生活を通して最悪の着順である9着に終わった。ドバイターフで海外G1初制覇を果たし、秋には天皇賞優勝という輝かしい成績を残した4歳の締めくくりは悔しい結果になった。

 明けて20年、5歳になったアーモンドアイは5月のヴィクトリアマイルで始動した。東京競馬場の芝1600㍍を1分30秒6という好タイムで駆け抜け、2着に4馬身もの差をつけていた。続く安田記念はグランアレグリアの完璧なレース運びの前に2着に終わったが、相手をほめるしかなかった。

 20年は牝馬が大活躍した年だったと書いた。その現象は、牡馬と牝馬が同じ土俵で戦う中央競馬のGⅠレースで春から続いていた。3月の高松宮記念でモズスーパーフレア(牝5歳)が繰り上がりで1着になると、ラッキーライラック(牝5歳)が大阪杯で優勝。安田記念でアーモンドアイを下したグランアレグリア(牝4歳)は安田記念のほかにスプリンターズSとマイルチャンピオンシップも制した。6月の宝塚記念で優勝したクロノジェネシス(牝4歳)は暮れに有馬記念でも1着になった。これほど豪華な牝馬勢の中にあってもアーモンドアイの走りは群を抜いていた。

2020年 ジャパンカップ©スポーツニッポン新聞社

 夏を休養に充てた後、秋は天皇賞で実戦に復帰した。好スタートから4番手につけると、最後の直線で抜け出し、32秒台の末脚で伸びてきたフィエールマン、クロノジェネシスの追い込みを封じ、前年に次ぐ天皇賞・秋2連覇を飾るとともに新記録となる国内外を含めた芝GⅠ8勝目を挙げた。秋の天皇賞で2勝したのは過去に3頭いて、アーモンドアイは唯一の牝馬だ。体調を見極めた陣営はジャパンカップへの出走を表明した。同時に、このレースが現役最後になることも発表された。

 引退レースはとんでもないレースになった。デアリングタクトとコントレイルが相次いで参戦を決めた。デアリングタクトはこの年に誕生した三冠牝馬であり、コントレイルは三冠馬だった。アーモンドアイを含め3頭の「三冠馬」が一堂に会することになった。

 レースは超ハイペースで進んだ。アーモンドアイは4、5番手につけた。デアリングタクトは7番手、コントレイルは9番手で続く。残り100㍍付近でアーモンドアイが先頭に立つ。コントレイル、デアリングタクト、カレンブーケドール、グローリーヴェイズの4頭が懸命に追いかける。だが、その差は詰まらない。アーモンドアイが現役最後のレースを白星で飾り、見事に1着でゴールした。JRAのGⅠ8勝、芝のGⅠ9勝はともに最多記録になった。

有吉正徳

1957年、福岡県出身。82年に東京中日スポーツで競馬取材をスタート。92年に朝日新聞に移籍後も中央競馬を中心に競馬を担当する。40年あまりの取材で三冠馬誕生の場面に6度立ち会った。著書に「2133日間のオグリキャップ」「第5コーナー~競馬トリビア集」

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