ジェンティルドンナ
Gentildonna
牝、2009年2月20日生まれ
父ディープインパクト
母ドナブリーニ(父Bertolini)
馬主/サンデーレーシング
調教師/石坂正
生産牧場/ノーザンファーム
通算成績/19戦10勝
2012年、ジェンティルドンナは史上初めて3歳牝馬としてJRA賞年度代表馬に選ばれた。
この年、ジェンティルドンナは桜花賞、オークス、秋華賞を制し、史上4頭目の牝馬三冠に輝いた。父のディープインパクトも皐月賞、日本ダービー、菊花賞を制した三冠馬である。親子で三冠馬になった上に、ジャパンカップでは1つ年上のオルフェーヴルと壮絶な競り合いを演じ、このレースをハナ差でものにした。オルフェーヴルも三冠馬。ジャパンカップで実現した「三冠馬対決」にジェンティルドンナは勝利した。創設32回目にして3歳牝馬のジャパンカップ優勝も初めてのことだった。数々の偉業を達成したジェンティルドンナは記者投票289票のうち256票を集め、文句なしの年度代表馬に選ばれた。
メジロラモーヌ、スティルインラブ、アパパネ。ジェンティルドンナに先んじて牝馬三冠に輝いた先輩たちはなぜか、三冠達成後に勝てなくなった。メジロラモーヌは有馬記念で9着に終わると現役を引退した。スティルインラブは秋華賞後、5歳まで走ったが、9戦して一度も勝てなかった。アパパネは4歳時にGⅠヴィクトリアマイルで優勝したものの、秋華賞後は10戦して、勝ったのはヴィクトリアマイルだけだった。
その点、ジェンティルドンナは別格だった。4歳時にもジャパンカップで2連覇を果たすなど牝馬三冠を達成した後も白星を積み重ねていった。秋華賞後、引退までにGⅠばかり4勝した。6歳年下のアーモンドアイが出現するまで、間違いなく「史上最強牝馬」はジェンティルドンナだった。
3連覇を狙った14年のジャパンカップでは4着に終わった。勝てば引退というプランもあったが、すっきり競走生活にピリオドを打ちたかった陣営にとって不完全燃焼の成績で、有馬記念を引退レースにすることになった。
実績のあるジェンティルドンナだったが、出走馬16頭の中で4番人気にとどまった。理由ははっきりしていた。初めて走る中山競馬場に不安を持たれていたのだ。東京競馬場で優勝したジャパンカップやオークス、桜花賞を制した阪神競馬場などジェンティルドンナはのびのびと走れる広い競馬場向きでコーナーを6回も回る中山競馬場の有馬記念は不向きではないか、と予想された。
だが、それは杞憂にすぎなかった。好スタートから先行集団にとりつくと、スムーズに流れに乗り、ゴール前の競り合いをしのいで優勝した。国内外合わせ、7つ目のGⅠタイトルを手にして現役生活を終えた。この年、ジェンティルドンナは2度目の年度代表馬に選ばれた。
引退したジェンティルドンナは母としても大仕事を成し遂げた。モーリスとの間に産んだ娘のジェラルディーナが22年のエリザベス女王杯で1着になった。競走馬として大活躍し、生産界に戻ってからも優秀な子を送り出す。サラブレッドとしての理想的な姿がジェンティルドンナだ。