モーリス
Maurice
牡、2011年3月2日生まれ
父スクリーンヒーロー
母メジロフランシス
母父カーネギー
馬主/吉田和美氏
調教師/吉田直弘、堀宣行
生産牧場/戸川牧場
通算成績/18戦11勝
2025年の中央競馬の開幕を告げる第74回中山金杯は4番人気のアルナシームが優勝した。24年の中京記念に続く2度目の重賞制覇となった。アルナシームの父はモーリス。今回は幸先のいいスタートを切ったモーリスを取り上げる。
名中距離馬で名種牡馬になったモーリスだが、幼いころは目立たない存在だった。1歳の時に出場した競り市、12年の北海道サマーセールでは、わずか150万円(税抜き)の価格で落札された。1年後、2歳になったモーリスは5月の北海道トレーニングセールに出場する。札幌競馬場のコースを実際に走って動きを披露するセールで好時計を出し、1000万円で落札された。それでも、このセールでの最高価格が3000万円だったことを考えれば、決して高い価格ではなかった。
栗東トレーニング・センターの吉田直弘厩舎に入ったモーリスは13年10月、京都競馬場でデビューした。芝1400㍍を1分20秒6という当時の2歳コースレコードで快勝した。続く重賞の京王杯2歳Sは6着に終わったが、3戦目の万両賞で2勝目を挙げた。軌道に乗ったかと思われたが、シンザン記念、スプリングS、京都新聞杯と重賞3連敗でダービー出走の望みはなくなり、白百合Sで3着になったのを最後に休養に入る。と同時に美浦トレーニング・センターの堀宣行厩舎へと移籍した。
およそ8カ月の休養で立て直しをはかったことが奏功し、4歳の1月から快進撃が始まった。若潮賞、スピカSと特別レースを連勝すると、ダービー卿チャレンジTで重賞初制覇を果たした。勢いはそこでとどまらず、なんと初挑戦のGⅠ安田記念でも優勝をさらった。
夏を休養に充てたモーリスはさらに強くなって秋に再スタートを切った。マイルチャンピオンシップでGⅠ 2連勝を飾ると、初めての海外遠征にチャレンジした。世界のライバルを向こうに回しても底力を発揮し、G1香港マイルでも勝利を飾った。結局この年、モーリスは国内外で6戦全勝。GⅠ 3勝という成績を残し、JRA賞の年度代表馬に選ばれた。
5歳になった16年は5戦し、香港のチャンピオンズマイルと天皇賞・秋、香港カップとGⅠ 3勝を上乗せした。1歳の競りでわずか150万円の低価格で落札された子馬は自らの力でのし上がり、中央競馬で5億3千万円、香港で5億4千万円の賞金を稼ぎ、総収得賞金は10億円を超えた。これ以上の「ジャパニーズドリーム」はないだろう。
現役を引退して種牡馬になったモーリスも期待にたがわぬ活躍をしている。これまでにピクシーナイト(スプリンターズS)、ジェラルディーナ(エリザベス女王杯)、ジャックドール(大阪杯)、アドマイヤズーム(朝日杯フューチュリティS)と4頭のGⅠ馬を送り出した。またシャトル種牡馬としてオーストラリアに渡り、現地でもGⅠ馬を生み出した。モーリスの遺伝子は日本だけでなく、オーストラリアでも広がっている。